PUNCH!
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お互いの秘密


「……ん……なに?」


 俺が肩を揺さぶりながら声をかけるとマツバは眠い目を擦りながら居住まいを正した。


「俺さ、今年で高等部卒業じゃん? だからさ、旅に出ようかと思ってるんだ」
「――うん。しってる」

 マツバはさもそれが当たり前のように頷いた。あれっ俺マツバに話してないはずなんだけど……もしかして分かりやすかったのか?

 俺がひたすら首を捻っていると、マツバが口を開いた。

「今まで言い出せなかったけど、僕には千里眼があるんだ。……だから、カズヤが旅に出ることも、それを言い出せないことも知ってた。知ってて僕は……。これを知ったらカズヤは離れていくかと思うと……」
「ちょっと待って。話が飲み込めないんだけど……。えーと、途中からなんか話飛んでね?何で俺が離れる前提ではなしてんの?」

「だって……気持ち悪いでしょ……。人と違うものが見えて、時々だけど……心の中まで見えるなんて……」
「別に気持ち悪いなんて思わねーよ。あーなんつーか、別に見られて困るようなこと考えてる訳でもねーし、それにこれからは個性の時代だ! 人と違うなにかを持ってるってことは十分武器になると思うし……はは」

 うまくフォローするつもりが、後半なに言ってるかわからなくなった。なにが個性だアホか。
 ぐるぐると後悔していると、不意にマツバが吹き出した。

「ははっ、なんか……気にしてるのがアホらしくなってきたよ。」
「そうそう。そんなこと気にすんなって、俺なんか異世界の前世の記憶を持ってるんだぜ」

 努めて明るく、さりげなく、信じてもらえなくてもいい。ただ言っておきたかっただけ。


「なーんてな」

 ニヤニヤと、さも冗談であったかのように振る舞う。俺もマツバのことは言えず、同年代の友達なんてマツバしか居ないのだ。そんな友人を失うようなことはしたくなかったんだけど、言わずには居られなかった。


「――……信じるよ」
「……は?」

「カズヤが嘘をついてないことはわかってるし。確かに信じられない話だけどね、僕がゲームの登場人物だなんて」


 わあ! 千里眼って便利だね!

 思わず現実逃避をしてしまった。まあでも結果的にはよかった…のか?


 今まではお互いに相手との関係維持のために要らぬ気遣いをしていたが、それがなくなった。この年で言うのもあれなんだが、これが親友とか言うやつなんだろう。あーなんか恥ずかし。




 そのあとは今までの暴露話が嘘のように2人でほのぼのとまったりしていたのだが、不意にマツバが口を開いた。

「4月……予定では4月に僕の修験者になるための修行が終わるんだ」
「へぇ……よかったな」
「僕、頑張って3月に修行を終わらせるから……カズヤの旅に一緒につれていってほしいんだ」

 俺はこの言葉に結構驚いた。マツバは一生この地にとどまり、この町を守っていくものだと思っていたから。

「確かにこの町を守りたいけれど、そのためにも僕は強くなりたい。この町だけじゃなくいろんな町を見て、色々な経験を積みたいんだ」


 なるほど、理にかなっている。視野を広く持つことは人生において重要だ。
 頭でっかちにならないためにも、見聞を広めるいい機会であることは確かだ。

「いいんじゃねーの? 世界を知れて、さらに強くなれるし一石二鳥だな」
「うん。これから今までよりも忙しくなるから、修行が終わるまでは会わないようにしよう」
「わかった。俺はマツバが修行してる間に自分のポケモンを捕まえなくちゃな」

 これが切実な問題である。マツバにはゲンガーが居るとして、俺もポケモンを捕まえなくちゃならない。この辺りで出るポケモンではパッとしたやつがすくねえんだよな……俺の嫁リザードンの入手は絶望的だしな……。


「個人的には1匹ぐらいゴーストタイプを使ってほしいけどね。あと、ゲンガーは自由につれていって構わないから。もしものことがあったら大変だし」


 最初の方にマツバの本音が出てるが、最後の申し出は正直凄くありがたい。長年一緒に居たこともあり、ゲンガーはバッチを持っていない俺の言うことも聞いてくれるので、居るのと居ないのとでは天と地の差があるからな。

 つーか俺さっきから言葉を発してないんだけど。千里眼の力なのか? 千里眼マジパネェっす。これで俺がマツバの心が読めたなら2人で言葉を発せず会話ができてかっこい……くないか。端から見たらただ不気味なだけだな。自重しよう。



 そんなどうでもいいことを考えているうちに日が暮れてきた。

「じゃあそのときはゲンガー借りるな。つかそろそろいい時間だし帰るわ」
「わかった」

 俺が立ち上がるとマツバもつられて立ち上がる。もう数えきれないくらいに来ているので、迷うことなど万に1つもないのだが、毎回マツバは玄関先まで見送りに来てくれるのだ。
 玄関先で一度止まって向き合う。先に言葉を発したのはマツバだった。

「それじゃあ、気をつけてね」
「おう。次に会うのは3月。卒業式が1日だからその次の日にまた来るから」
「わかった」

 思えば最初に出会ってから、そんなに長く会わないことははじめてだった。今が一月の終わりごろなので、約1ヶ月。短いような気がするが週に2、3回の頻度であっていたのでなんだか違和感がある。
 ちょっと湿っぽい気分になったが、いつまでもここにいるわけにもいかない。

「じゃあ、な」
「うん、またね」

 そうしてお互いに手を降り別れた。


 さて、気分を切り替えて最初にゲットするポケモンを考えよう。




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なにこいつら付き合ってるの?って感じで、書いててイラッとしましたが、別に付き合ってないです…よ!

ただし、交友関係の狭さゆえにちょっとお互いに依存してるっぽいかも。
まあ主人公はそうでもないけど、マツバはすでにヤンデル要素がちらほら……。

ちなみにこのマツバさん、まだホウオウに心酔してません。まだというところがポイント。



今まで出番のなかった廃人設定が次回出てくるかも
注釈の付け方をどうしようか迷い中……


※印つけて文末に注釈でいいかなあ?新しいページ作ろうかなあ?


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