PUNCH!
252247 
 

 []


3292(ミツクニ?)


「この辺りだと思ったんだけど……」

 赤い何かを追って森に入ったものの、見失ってしまい途方にくれる。いや、絶対にこの辺りに来たはず。目の前の草を掻き分けると遠くの木の根本でさっき見た何かが丸まっているのを見つけた。
 これはチャンスとこっそり近づくと赤い体に模様があるのがわかる。あの柄はガーディだ! やっぱり俺の勘は間違っていなかった
、俺好みの炎タイプをようやく見つけて、舞い上がった俺はうっかり音をたててしまったが、ガーディは逃げる素振りを見せない。その代わりにこちらに向かって思いきり威嚇していたが。
 ガーディの特性は"いかく"と"もらいび"つまりあいつはいかくなのだろう。ますます俺好みである。ようやく見つけた炎タイプ、しかも良特性と来たらもう捕まえるしかないでしょう! と意気込んでゴーストを出す。今回の目的は捕獲だからなるべく攻撃はしない方向で。



「さいみんじゅつ!」

 一度目のさいみんじゅつは避けられた。60%だから仕方ない、そう自分に言い聞かせる。ガーディはこちらに攻撃を仕掛けるでもなく威嚇し続けている。もう一度さいみんじゅつを指示したとき、ガーディの首元が光った気がした。
 眠りに落ちたガーディに近づくと首には首輪がついていた。オレンジの飾り気のない首輪はボロボロで今にもちぎれそうだ。首輪にはドックタグがついていて、先程光ったのはこれのようだ。
 ドックタグには"3292"としか書かれておらず、飼い主……いや、トレーナーか、を探すのは難しい。
 本音を言えば見なかったことにしてゲットしてしまいたいのだが、そこは耐える。とりあえずこんなところに居たって仕方ないので、キキョウに連れ帰ることにした。ボールに入れれば楽なのだが人のポケモンとなればそれもできない。俺は仕方なくガーディを担いでいくことにした。途中で目が覚めたら確実に暴れられるよなあなんて考えながらガーディの腹部に手を回した。フサフサのモフモフを想像していたのに、実際のそこはぬるりと生暖かかった。……ぬるり? おかしいことに気づきガーディの腹部をよく見る。するとそこには大きな傷があり、血こそほぼ止まっているものの、危険な状態であることはわかった。俺は急いでガーディを担ぎ上げて走り出した。少々乱暴な移動だったが、ガーディは一向に目を覚まさず、そんなに強力なさいみんじゅつなのか、それともガーディの怪我が原因なのかはわからない。どちらにせよ好都合だ、俺は無我夢中でポケモンセンターを目指した。





 ポケモンセンターに連れて行くとガーディは急いで処置室に入れられた。落ち着きなく待っているとジョーイさんが顔を出した。全力疾走した俺に水を持ってきてくれたり、ここのポケモンセンターは本当に親切だと思う。


「ガーディは問題ありません。じきに目を覚ますでしょう」
「あ、ほんとですか、よかった……」

 ほっと息をつくとジョーイさんは笑顔でガーディのところへと連れて行ってくれた。ガーディの腹部には清潔な包帯が巻かれており、包帯のまわりの毛はすべて剃られていた。少し間抜けだ。


「この子はどこで見つけたんですか?」

 しばらくガーディを見ていると、ジョーイさんが声をかけてきた。

「キキョウの近くの森で」

 ジョーイさんはひとつ頷くと、そっとガーディに近づき、首輪に手を触れた。

「この首輪の意味を知っていますか?」
「意味?」
「これは警察犬の卵がつける首輪なんです、名前も何も書かれていないでしょう」


 なるほどな、この不思議な番号は名前を可愛らしくもじったわけではなく、ただの識別番号だったのか。
 なんだか一人で物悲しい気分になっていると控えめなノックのあとにジュンサーさんが入ってきて俺たちに軽く頭を下げた。


「うちのガーディがお世話になりました」

 無難な挨拶から始まった会話。とは言っても俺は初めに挨拶したきり、今までの経緯はすべてジョーイさんが話してくれた。それを聞き終えたジュンサーさんは困ったような顔になった。


「この子は普段からよく脱走するんです。生まれも育ちも訓練所で、ほとんど外の世界を知らないから」

 知らず知らずのうちに顔が強ばっていたらしい、ジュンサーさんは笑ってそんな顔をするなと言ってくれた。


「……もし、あなたの都合がよければ、この子をつれていってもらえませんか?」

 驚きでジュンサーさんをみると、真剣な表情で俺の目を見つめていた。
 そもそも俺は炎タイプを探していて、このガーディを捕まえようとしていたんだからこの話は凄くありがたい。


「俺でよければ!」


 俺は大きく頷き、笑った。



-------------------------


ガーディゲットだぜ!


- 7 -
PREVBACK|NEXT
[]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -