足りないものさがし
エアームドとか、聞いてないんですけど!! と、叫びだしたい気持ちを何とか抑える。確かにエアームドは厄介な相手ではあるが、勝てない相手ではないはず。物理受けとして名高いエアームドだが、とくぼうはそんなに高くない。勝てるか? いや、そういえば鋼にゴーストは半減されてしまうんだった……悪ももちろん半減されるし……手いうか! 鋼タイプとか鬼畜すぎるだろ……。あー! やっぱり最初にコガネのゲームコーナーに行って10万ボルトを入手するべきだった! なんてタイミングが悪いんだ!
しかし、いつまでもくよくよしてるわけにはいかない。相手のエアームドのレベルは28でゴーストよりも3高い。ただでさえ勝てるかどうかの瀬戸際なのにこれはいただけない。このまま勝負を挑んで勝てる可能性は限りなく低い。長老のウツボットのようにギリギリの賭けとはちがう。完全な負け試合だ。俺は苦渋の選択をした。
「まいった! 俺の負けだ」
ソラさんは虚を突かれたような顔になった。当然だろう、ここまで来て引き返す奴なんていなかっただろうし。本当ならこのまま向かって言ったところを返り討ちにしてきたんだろう。
しかし負けると分かっているバトルでゴーストを傷つけたくなかったのだ。今までたくさんのポケモンを倒してきた俺が言っていい言葉じゃないのかもしれないが、だからと言ってゴーストを戦わせたくなかった。痛いのは俺じゃなくてゴーストだからな。
「へえ、意外だな。このまま突っ込んでくるかと思ったんだが。君は相手をよく見ているようだ。もしこのまま戦っていたなら私の勝ちだっただろう。押すばかりが戦いじゃない、見ようによっては"逃げ"だが私はそれを否定しない。君はポケモンを大事にしているようだしな。次の挑戦を待っている」
「ちくしょう……」
「おつかれ」
ジムの外に出るとようやく息ができた気がした。知らず知らずのうちに緊張していたらしい。あれだけ余裕だと思っておきながら、勝てなかった。今までなめていた。それを再認識することになった。マツバもきっとマダツボミの塔で同じことを考えたのだろう。
「やっぱり新しい仲間が必要だな。マツバはどうする?」
「僕はゴーストタイプしか使わない。だからゴースをもっともっと強く育てるよ」
新たな決意を胸に俺たちはジムを後にした。
あの後、俺たちは別行動をすることが多い。マツバはゴースのレベル上げのためにトレーナーとバトルしたり、野生のポケモンと闘ったりしているからだ。逆に俺は新たなポケモンを捕まえるために草むらの中を歩き回っていた。
俺の目下の目標は炎、または電気タイプのポケモンの捕獲もしくは技マシンをゲットすることだ。このあたりで出現するポケモンといえばメリープぐらいだろうか。でもゲームの生息地はこっちでは当てにならない。できればコイルとかロコンあたりを捕獲したいところだが、そううまくいくだろうか……。
メリープにはよく遭遇するのだが、個人的にメリープは電気タイプなのに鈍足すぎて好きじゃない。一生の付き合いをするならほかのポケモンがいい。
そうこうしているうちにだんだん日も暮れてきて今日の散策は中止。ポケモンセンターに戻ることにした。
あれから1週間たったがなかなかめぼしいポケモンは現れない。探す場所が悪いのかもと思い、最近はだんだんと捜索範囲を広げているのにもかかわらずロコン1匹出て気やしない。エンジュの近くまで行っても出てこないのは単に運が悪いのか、それともここには生息していないのか。探しても探しても出てこないのでいつの間にかゴースのレベルも上がっていた。
「あー、今日もダメか。もう日が暮れちまう」
空はすでに茜色に染まっており、今日の捜索もここまでだ。重い足取りでポケモンセンターに戻ることにする。
ふと、赤っぽい何かが森の木の間を通り抜けていくのが見えた。赤っぽいといえば炎タイプである可能性が高い。まさかこんな森の中にコイキングがいるとも思えないし。本当は帰ろうと思っていたが、すぐそばに目当てのポケモンがいるかもしれないという時にじっとりていられるような俺ではない。危険ではあるだろうが引き返すわけにはいかない! と、俺は赤い何かが消えていった森の中に飛び込んだ。
-------------------------
- 6 -
PREV|BACK|NEXT