伝説と中二病
エンジュからコガネまで、無理せず歩くならば当然それなりに時間がかかる。
ゲームでは1分もかからず行ける距離だが、もちろんそんなに短いわけがない。
ひたすら歩き続けること数時間。もうすぐやっとエンジュから抜けるだろうかというところだ。町の中でポケモンバトルをするにはお互いの合意が必要だ。しかし、町から出た公道では、トレーナー同士は目があったら問答無用でポケモンバトルが常識。もちろん戦えるポケモンがいる場合に限るが。
「もうすぐ37番道路に出るね」
「ここを出たらバトル挑まれたら断れないからな?」
「わかってるよ」
お互いの顔を見合わせながら、ニカリと笑う。ちなみにマツバはぽやんとした笑顔だった。
二人ともエンジュシティから出たことはなかった。俺は期待半分、不安半分で前に進んだ。
ふと気がつくと、頭上から何かが降ってきているような気がして上を見上げるとそこにはまばゆい光を纏ったホウオウがいた。
隣を見るとマツバも気がついたようで、唖然としていた。ホウオウはチラとこちらを一瞥すると、一声鳴いた。
俺にはそれがこれからの旅の激励のように感じて、なんだか嬉しくなった。
するとホウオウは何事もなかったかのように頭上を飛び去っていった。スズのとうに帰ったのかもしれない。
「今のすごかったな、伝説のポケモンを直接見るのは初めてだから……っておい? マツバ聞いてんのか?」
返事が帰ってこないので、痺れを切らして後ろを向くと、マツバはホウオウが飛び去った方向を見ながら涙を流していた。
「はぁ!? おいマツバどうしたんだよ? もしかして感動してんの」
するとマツバはゆっくりと頷いた。
どうやらホウオウの神々しいオーラにやられてしまったようだ。ホウオウ信者が一人生まれた瞬間だった。マジホウオウすげーっすね……。しかし未来への不安が増えた瞬間でもあった。
その後、放心状態のマツバを引きずりながら歩いていると、木の影から二人のトレーナーが飛び出してきた。
「トレーナー発見!」
「早速バトルだぜ!」
元気よく決めポーズを決めているところ申し訳ないのだが、心の中でブリザードが吹き荒れる。
明らかに俺よりも年上っぽい二人組が、小学生みたいな決めポーズして、ドヤ顔してくるなんて初めての経験だよ……。
そっと目をそらして通りすぎたい衝動に駆られたが、目の前の二人は易々と通してくれそうにない。
マツバに目を向けると案の定トリップしていた。あの衝撃的シーンも目に入らないのか……ホウオウ効果パネェです。
「おい、マツバ! ボヤッとしてんな! バトルだぞ!」
耳元で叫ぶが効果なし。かくなるうえは実力行使だ!
俺はマツバの膝の裏を水平に蹴り飛ばした。いわゆる膝カックンである。
「いたい! 何するの!?」
「恨むなら俺じゃなくてカッコイイポーズ(笑)でバトルを挑んできたあいつらにしろよ!」
カッコイイポーズ(笑)と言ったところで、相手の二人組の目が輝いたように見えたが、俺は華麗にスルーすることにする。
横ではいまだに状況がいまいち把握できていないマツバが立ち上がりボールを構えているところだった。それにならい、俺もベルトからボールを外し、相手を見据える。
相手のアホ二人組は先程までのふざけたポーズじゃなく、真剣な表情でボールを構えていた。
「使用ポケモンは一人一体のダブルバトルだ! いけっピジョン!」
「出てこい! ラッタ!」
「「いけっ! ゴース!」」
あちらがポケモンを繰り出す。ピジョンとラッタは共に20レベルで、こちらのゴースは23。なぜだかマツバはあのゲンガーではなくゴースを繰り出していた。
疑問に思ったが、たぶん1からゴースを育ててみたかったとかそんなんだろう。長い付き合いだ、恐らく間違っていない自信がある。問題はその、マツバのゴースのレベルが18だったことだ。まあ、今何をいったって仕方ないからな。さっさとこいつらを片付けますか!
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ぶらり二人旅編始動!
前にもいったように、別名「ほのぼの仲間集めルート」なので、マンネリ化しないように頑張りたいです。
この旅が終わってからが一番の盛り上がりどころというか、メインみたいな感じなので……まずは旅を終わらせる!
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