いたずらゴース
ゴースをゲットしたら催眠術をかけられて、なんやかんやで正気に戻りました。前回までのあらすじを確認したところで、今の俺はまだステータスが見える状態が続いている。これもすべて俺の妄想が作り出した幻なのかと思うと恥ずかしすぎて首を吊ってしまいたくなる。
マツバいわく催眠術の効果は完全にゲンガーの夢食いによって無効化されているらしい。
それなのになぜかステータスが見えると言うことは、それほどまでに俺の妄想力が強すぎて幻覚を見ているのかもしれない。
「もしかしたら催眠術によって今まで秘められていた能力が覚醒したのかも」
「やめろおおお! やめてくれ! 秘められた能力とか覚醒とか中二病すぎる! 痛々しすぎる!」
「チュウニビョウ? なにそれ?」
純粋な目で見つめられると、とたんに自分が汚く見える。やめろ……そんな目で俺を見るな……。
大変取り乱しました。
あのときは話しているうちにだんだんと気分がハイになり、最後の方はほんとに頭痛いことを口走っていた自覚がある。自覚があるからこそ羞恥心が尋常じゃない。
こういうのって、普通覚えてないものじゃないの? 気絶とかしとけばよかったんだきっと……。
そんなことを考えても後の祭。そんなことを思っても仕方ないことはわかってるんだけど。
後悔と羞恥心がぐるぐると脳内で暴れまわっているとき、ことの原因であるゴースはマツバのゲンガーとくるくると楽しそうにじゃれていた。
ちくしょう、図らずも黒歴史を産み出してしまった……目撃者がマツバただ一人だからまだマシだと思うしかないな。
心のなかで自分を慰めているとマツバがこちらに膝を進めてきた。
「で、あれどうするの」
「あれって? ゴースのこと?」
マツバはコクリと頷き、いまだにじゃれあっている二匹を一瞥した。
「下手したら死んでたかもしれないんだし、これから先そういうことがないとも言えない。あいつは逃がして別のを捕まえた方がいいんじゃない?」
なに言ってるんだこいつ。そんな気持ちを込めてマツバを見ると、マツバは真剣な目でこちらを見つめていた。冗談や軽い気持ちで言っている訳じゃないようだ。
でも、
「それはしない。俺はこいつと旅するって決めたんだ」
俺はマツバをしっかりと見据えて言った。確かにいきなり催眠術食らったのはビビったけど、実際に俺は死んでないし、結果的になんか色々見えるようになったし、むしろ今は感謝してるくらいだ。
それに俺がいやなら自分からボールに入ったりしないし、催眠術を使ったのもなにか理由があるように感じる。まあこんなのは飼い犬に手をかじられたとでも思って水に流そう。
と、いうのもあるが。ゴースを手放さない最大の理由はこのゴースの性格が「おくびょう」で、かつ個性が「いたずらがすき」と、いうことは! もしかしたら特攻の個体値がV(31)かも知れないってことなんだよね! これは逃がすわけにはいかないだろ……。
内心で自分の幸運を噛み締めていると、いつのまにかゴースが隣に浮いていた。さっきまでじゃれていたゲンガーは、マツバの隣に座っていた。かわいい。
このゴースもいずれはゲンガーになるんだという期待を込めてゴースを見ると、ゴースも俺を見ていたようで、バッチリと目があった。
どちらともなく笑顔になると俺は口を開いた。
「これからよろしくな、ゴース。明日から育成開始だから、覚悟しとけよ」
俺の人生初黒歴史の恨みも込めて、ビシバシとしごいてやろう。
そんな俺の気持ちを察したのか、ゴースはビクッと震えて俺と距離をとった。
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