PUNCH!
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「あぁ……緊張する……」


 周りには真新しい制服を来た人たちが緊張した面持ちで用意して席についている。左端の人から順番に立ち上がり一言ずつしゃべって座る。ここまででわかる通りに、今はクラスで自己紹介中だ。
 中学校の入学に合わせて引っ越しをしたため、この学校に知り合いはゼロ。友達作りが苦手中の苦手というかあがり症で人との会話も満足にできない私にとって自己紹介とは鬼門であり、ガリガリと精神力を削られる一大イベントでもある。

 ここでうまくやることができれば、今年一年、いや、中学校生活の80%が安泰といえるはず。はきはきと元気に、笑顔を忘れず、気さくに……そう、今私の目の前で挨拶をしている子のように…………


「ヒカリです!一年間よろしくお願いします!」

 ありきたりな挨拶だけど、はきはきと聞きやすい声と、きらきらの笑顔、髪の毛はサラサラで、顔もすごくかわいい。まさに理想の女の子がそこにいた。

「次!」
「は、はい!」

 あああああああああどうしようどうしよう何言いたいのか度忘れした!しかもどもった!どうしようどうしよう!ひいいいみんなこっち見てるし、どうしようどうしよう、ヒカリちゃんの後とか、ハードル高すぎる、どうしようどうしよう!

「あ、ふ、フユカです、いい一年間、よろしくおねが、い……しましゅ!」

 あああああああああうあああああああうあうあうやばいやばいやばいあああああひいいいやばい、さ、最悪だ、噛んだ、ああああああ、恥ずかしい、しねる、今なら死ねる……
 顔を伏せて手で顔を覆っていると、前からクスッと笑う声が聞こえた。声のした方を見ると、理想の女子像であるヒカリちゃんが口に手を当ててこちらを見ていた。や、やっぱり笑いますよね、思いっきり噛んだしね!しゅってなんだしゅってえええええ!


「あっ、ごめんね、バカにしてる訳じゃないの。かわいいなと思って! よかったら友達になろうよ!」

 ニコニコとこちらに笑いかけてくるヒカリちゃん。フォローも欠かさないなんてさすがだな……こういう子はさぞかしモテるんだろうな……。しかもさりげなく友達になろうって言えるし……。

「だめ……かな……?」
「ぜ、全然! だめじゃないよ! ……仲良くしてください!」

 ヒカリちゃんについて考えていたら返事を返していなかったみたい、慌てて返したから声が上ずったけど気にしない。
 それにしても首をかしげてこちらをうかがうヒカリちゃんは殺人的にかわいかった。私が男だったら惚れていたかもしれない。



 こうして初日からかわいい友達をゲットして、これからの学校生活に希望を持つことができた。狙った訳じゃないけれど、思いっきり噛むことでヒカリちゃんに声をかけてもらえたしなんだかラッキーだったなと思ったのだった。


ピカピカの一年生



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