おんなじkiss

不二子に頼まれた盗みを成功させ、ルパンは陽気な足取りでアジトへ帰る。
その背を呆れたように見る良き相棒二人。そして意気揚々とドアを開けた。


「ふっじこちゃーん!」

「あら、お帰りなさい」


何食わぬ顔をして出てきた女は、ちらりとルパンの手元を見る。その手には、しっかりと彼女のねだった大粒のサファイアの付いた首飾り。
確認して、不二子はニコッと微笑んだ。


「本当に持ってきてくれたのね」

「もっちろん!ふーじこちゃんの為なら例え火の中水の中!」

「頼もしいわ」


玄関先での甘ったるーい、狐と狸の化かし合い。いい加減見飽きたというモンだ、と次元と五ェ門は先に中へと上がった。


「そうだ。三人とも、温かいコーヒーでも飲む?」

「飲む飲む!」

「俺も」

「拙者は温かい茶を貰いたい」

「分かったわ」


いつも自分の事しかしない不二子が、三人にコーヒーと茶だと…?
るんるん、と鼻歌混じりにコーヒーを淹れる姿を、次元と五ェ門は奇怪な物でも見るかのように、そしてこれから何が起こるんだと臨戦態勢でいた。
そんな中ルパンはキッチンに立つ不二子にそっと近付き後ろから抱き締めた。


「ちょっとルパン、邪魔」

「ねー不二子ちゃん。俺ご褒美が欲しいなぁ」

「今コーヒー淹れてるじゃない」

「そんなんじゃなくってさ。ほら例えば。不二子からの熱ぅいチューとか、ベッドインとか…」


彼女の腰をいやらしく撫でながらそう言うルパン。無理やり引き剥がそうとも思ったが、不二子はふう、と一つ溜息を吐いてルパンに向き直った。


「分かったわよ」


本当に隕石でも落ちてくんじゃねーか?
信じられない光景に驚きながらも、次元は不機嫌になる。
何故今日は、そんなにもルパンに甘いんだ。


「今日だけよ?」

「やったー!」

「ほら、目瞑って」

「んー」


まるで子供のようにはしゃぐルパンは不二子の両肩を掴んだまま両目を閉じる。そして不二子は彼の頬に手を添えて。


チュッ。


優しく頬にキスをした。


「え、お口じゃないの?」

「当たり前でしょ?」

「えーこっちにも…」

「調子に乗らない!!」


ガンッと鈍い音を立て、ルパンの顔面はフライパンで叩かれた。かなり痛そうだが、スックと立ち上がると、上機嫌にリビングへ戻り風呂に入ると言い出した。


「ちょっと、コーヒーは?」

「不二子ちゃん飲んじゃっていいよ!」

「もう…」


しょうがない、と溜息を吐きながら不二子は次元の横たわるソファの前にコーヒーを置いた。五ェ門のお茶も置くと、次元が手首を掴んだ。


「何?」

「随分とご機嫌だな」

「すっごく欲しかったんだもの、このネックレス!」


うふふと首につけたそれを次元に見せ付けるように一回り。だが次元は不機嫌だった。


「…ふん」

「どうしたのよ?」

「別に。俺も、褒美が欲しいもんだぜ」


そう言って帽子を深く被り不貞寝する。頭上でくすりと笑う声が聞こえた。


「やだ、嫉妬?」

「っせぇ」

「分かったわよ。はい、ご褒美」


突然帽子を取られ「おいっ!」と手を天井に伸ばすのと同時に、唇に彼女のそれが当たった。


「特別に、お口にプレゼントよ?感謝しなさいよね」


再び帽子を戻し、不二子は反対側のソファに座った。次元は戻された帽子を顔に押し当てた。


「…チッ、気色わりい」


そうぼやく彼の耳は真っ赤だった。



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