味見程度に
アジトにはもくもくと、チキンの良い香りが立ち込めている。
次元はエプロンをつけ、キッチンに向かってクリスマスディナーの用意をしていた。
外はもう暗く、そろそろ他のメンバーが帰ってきそうな時間帯。
するとガチャリとドアノブが回る音が次元の鼓膜を叩いた。
「ただいまー、あら次元。」
リビングに入ってきたのは不二子だった。
不二子はキッチンに立つ次元に気付き、歩み寄る。
「お帰り。」
「これあなたが全部作ったの?」
不二子はダイニングテーブルに並ぶ料理を指差して言った。
「あぁ。なかなかの出来だろ?」
「すごいわ。こんな才能があったのね。」
不二子は嬉しそうに料理を見つめる。
色とりどりの料理は電灯によってキラキラと輝き、クリスマスツリーのイルミネーションにも劣ってはいなかった。
「お前さんは意外と食い意地が張ってるな。」
ふふ、と微笑むと不二子は少し紅潮し、次元を睨んだ。
「いいのっ。女の子だって美味しそうなものには弱いんだから!」
「そうかい。……。」
すると次元はあることを閃いた。
「不二子、俺は今日頑張った。」
「え?」
次元はエプロンを外す。
「お前らがいない間、1人でクリスマスケーキまで焼いた。」
「そ…そうなの。ありがと。」
ずい、と不二子に詰め寄る。
「それでもう俺は腹が減った。」
「え…でもまだルパンたちが…。」
不二子は後退りをしたが、後ろは食器棚で逃げ道はなかった。
「わかってる。だからよ、」
不二子のすぐ後ろの壁に手を当て、次元は不二子に顔を近付ける。
「あいつらが帰ってくるまでお前を食いてぇんだ。」
不二子が何かを言おうとして開いた唇を次元は塞いだ。
だがそれは深くなく、すぐに次元は不二子から離れた。
不二子は目を丸くして次元を見ている。
「旨いもんに目がない奴同士なら分かってくれるだろ?」
不二子は小さく笑って次元の首に手を回した。
「仕方ないわね。でも2人が帰ってくるまでよ?」
次元は微笑むと、頷く代わりにもう一度キスをした。
二度目のキスは深く、次元は舌を不二子の口内で翻弄させた。
舌の先端が上顎に微かに当たると、「んっ…」と甘い息を出して不二子は身をよじる。
何度も繰り返しているうちに不二子は立っていられなくなり、力が抜けたように膝から崩れ落ちた。
だが、それを分かっていたかのように次元は不二子を抱き止め、唇を離さなかった。
そしてそのままゆっくり壁を伝って落ち、床の上に不二子は仰向けになって、次元は不二子に覆い被さった。
次元は一旦唇を離し、満足そうに不二子を見下ろした。
「そんなに良かったか?」
息が上がっている不二子は、潤んだ瞳で次元を見つめる。
「悪くはなかったわ。でも…。」
ゆっくり次元の帽子に手を伸ばす。
パサッと乾いた音を立ててハットは床に落ちた。
「あなたの顔が見れないのは嫌。」
「…そりゃ失敬。」
不二子が微笑むと、次元もそれにつられた。
「でももうすぐ帰ってくるわよ…?」
「わかってるさ。だから味見程度に…な。」
クリスマスの夜はまだ長いのだから。
-fin-
◯次×不のクリスマスラスト小説。
料理してる次元って
なんだかとても微笑ましい…
エプロンをつけているのを
2ndで見たときも
笑ってしまいました(*´∀`*)
Thank you for reading!!
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