貴方の生き甲斐

ふらふらと雪の降る街中を歩いていると、道の端におでんの屋台があるのに気付いた。

次元はそれが視界に入ると、自然と足がそちらへ向かった。

「いらっしゃいっ。」

丸坊主の頭にねじり鉢巻という典型的な屋台の親父のスタイルをした男が笑顔で次元を招き入れる。

次元が座ろうとすると、そこには既に1人の先客がいた。

「アンタ、銭形のとっつぁんか?」

茶色いトレンチコートを脱いで隣の空席に置き、熱燗を口にしていたのは紛う事なき銭形だった。
銭形は聞いたことのある声に振り向き、赤い顔をして目を白黒させた。

「次元?貴様何故ここに。」

「そりゃ俺だって1人で飲みたくなる日もあるさ。親父、俺にもこれくれ。」

次元はコートを脱いで銭形の隣に座ると、銭形の持つ酒瓶を指差し、親父におでんも頼んだ。

「残念だが今はルパンはいねぇぞ。」

「んな事ぁ分かっとる。ルパンがいれば、先にわしに顔を出すに決まっているんだからな。」

「そうかい。」

次元は口角を上げながら近くの箸と皿を手前に引き寄せた。

「とっつぁんは毎度毎度よくも飽きずにあいつを追い掛け回せるなぁ。もういい年してんだから休んだらどうだ?」

「それは心配してるのか馬鹿にしてるのかどっちなんだ。」

「とっつぁんの好きな方で。」

「……。まぁどちらでもいらん世話というやつだな。ルパンを捕まえるのがわしの宿命であり、生き甲斐でもある。」

「おーおー、ご立派なこった。ご先祖様の血か?」

親父が次元の前に酒と、皿の上にがんもと竹輪を置いた。

「ご先祖様もそうだが…もうこれは定めと言った方が良さそうだ。切っても切れぬ仲とはこの事よ。」

「切っても切れぬ仲ねぇ…。」

次元が竹輪に手を伸ばすと、銭形は箸で大根を切った。

「とっつぁんも苦労してんなぁ。」

「お前たちが黙って檻に入ってくれれば苦労せずに済むんだ。」

「そいつはちょいと願い下げだな。」

次元が笑いながら口をもぐもぐと動かしていると、銭形は本心では無かったのか、楽しそうにククッと喉を鳴らして酒を飲んだ。

「ま、これからも俺たちはあんたから逃げきってやるよ。」

「このわしから逃げられると思っているのか?」

赤い顔で銭形は次元を睨む。次元は肩を揺すりながらコートを羽織った。

「逃げ切ってやるさ、なぁルパン?」

「………は?」

次元が立ち上がって親父に目を向けると、親父はニヤリと口角を上げ、自分の顔を掴んだ。
するの親父の顔はまるでお面のように剥がれ、その下にはあの世界の大泥棒の顔があった。

「俺たちはずっとアンタの生き甲斐になっててやるよ、とっつぁん♪」

「ル、ルパーン?!」

ウインクをすると、ルパンは屋台の隣に止めていたバイクに飛び乗り、エンジンをかけた。

「おでんの代金はいらねーよっ。でもその代わりに今夜の目当てのもんは頂きにいくぜ♪」

次元もその後ろに乗ると、バイクはたちまち排気ガスを撒き散らせて姿を消した。


「よくここが分かったねー。」

「お前の考えることなんて今更通じないわけねぇだろ。」

「さすが相棒♪」

バイクは颯爽と高速道路を駆け抜ける。

「さて、今夜はとっつぁんもいねーし、派手にやるか?」

ルパンが片手にタバコを挟み、振り返らず次元に渡す。
次元はそれを受け取って吹かすと、弧を描いて笑みを見せた。

「そうだな。」

冷たい風が2人を押す。

「生き甲斐、か…。」

ルパンが小さく溢すと、次元は聞こえないフリをして紫煙を吐いた。

「んじゃ、一仕事といきますかっ。」

「あいよ。」

2人を乗せたバイクは暗がりの夜道を軽やかに駆けていった。


-fin-

◯次元ととっつぁんの会話です(^^)
あと生き甲斐と言われて
少し喜ぶルパン(´ω`)(笑)
シリアスにしようかと思ったら
げっ撃沈…!!
どうなってるんだ私の国語力(泣)
いつか真面目なとっつぁんを
書いてみたいです(;_;)

Thank you for reading!!


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