静寂の晩酌

※「消えぬ狼の血」の続き?みたいなセリフがあります!良ければこちらからどうぞ*※










肌寒い夜風が止むことなく、月に晒している肌に刺さる。

五右ェ門は一味が寝た後1人リビングに残り、ベランダを開けて猪口で日本酒を口内へゆっくりと流していた。
すると後ろからギィと、扉の開く音が聞こえた。

「よーぅ、五右ェ門。こんな夜中に独り酒宴か?」

「ルパン…。」

ベランダと室内の境目で胡座をかいている五右ェ門に笑いかけると、ルパンはその隣に腰掛けた。

「手酌じゃ旨い酒もイマイチだろ?俺様が注いでやるよ。」

「かたじけない。」

ルパンは黒く重みのある色合いの小さな酒瓶を持つと、酒が無くなりかけていた五右ェ門の猪口にトクトクと白み掛かった日本酒を注いだ。

五右ェ門は猪口を持つ手とは逆の手でルパンから酒瓶を受け取り、ルパンに余っている猪口を差し出すように促した。

「さんきゅ。」

「構わぬ。」

ルパンの分を注ぎ終えると、五右ェ門は猪口に映る水月を眺め、それに口付けた。

ルパンは黙ってその光景を横目に見ていた。

こうやって見ると、日本を愛でるただの侍なんだがなぁ…。

普段は余すとこなく全身から殺意を放ち、誰とも馴れ合おうとしない侍が今はこうして世界一の泥棒と盃を交わしている。

普段からこうだと色々やりやすいんだけどね。

ルパンは笑い混じりのため息を吐いて、日本酒を飲んだ。

「冬は月が綺麗だなぁ。」

猪口を一先ず置き、ルパンは胸ポケットからタバコを取り出した。

「お前もいるか?…あぁ、煙管の方がいいか。」

ルパンはタバコを胸にしまい、立ち上がって棚にある煙管を探した。

「いや某は……。」

別に紫煙を燻らせたい気分ではなかった五右ェ門は振り向き、ルパンを見るが、ルパンは既に煙管を見つけていた。

「見たところ酒ももう無ぇし、ちょいとだけ付き合ってくれよ。」

ルパンは煙管を持って五右ェ門の隣に腰掛け、煙管を五右ェ門に差し出す。
すると一瞬目を丸くした五右ェ門は目を細めて笑い、煙管を受け取った。

「ライターはどこかねー。」

ごそごそとポケットを漁っていると、五右ェ門はルパンにマッチ箱を渡した。

「あらま、どしてこんなもん持ってんの。」

「気紛れだ。」

「ありがとよ。」

何故持っていたのか、本当の理由はわからなかったが、ルパンは追及せずにマッチ箱を受け取った。

シュッと音を立てて一本のマッチ棒を擦ると、五右ェ門の持っている煙管に近付ける。

煙管が紫煙を上げると、五右ェ門は白い煙を尖らせて口から吐き出した。
ルパンは自分のタバコにも火をつけると、同じように煙を吐き出す。

「どうだ?久しぶりの喫煙は。」

「なかなか悪くない。」

「たまにはいいもんだぜ、こういうのも。」

「そうかもしれんな。」

ルパンがニカッと笑って「だろ?」と言うと、五右ェ門も小さく笑った。

あぁ、こうやって笑うんだな。

ルパンは満足そうに微笑むと、月を見上げた。

「やっぱ綺麗だわ。」

「どうした、今宵はやけに情緒的ではないか。」

「気分なのさ。たまには…いいだろ?」

「…あぁ。」


いつかの月夜は互いが刃を突き付けていた。
だが今宵交わらせるのは2つの紫煙だけ。

冷たい冬空の下、ルパンと五右ェ門はその後何も交わさず、二度目の宵を過ごした。


-fin-

◯ル+五のほのぼのなお話(^^)
1stの2人はすごく小説で
書きたくなってしまいます…
煙管を持つ五右ェ門って
素敵ではないですか?
1stならではの大人な2人に
漂う空気をもっともっと
学んでいきたいです*

Thank you for reading!!


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