特効薬のススメ

「っつ…。」

タバコを灰皿に擦り付けようと寝返りをうつと、左の脇腹に鋭い痛みが走る。
自分の体に舌打ちをして、次元はため息をついた。




いつものように警備に取り囲まれ、それを何とか切り抜けた次元は前から来た不二子と合致した。

「次元っ、何とかまけたようね。」

「あぁ。んじゃ、ルパンたちんとこに……。」

その瞬間、不二子の背後で何かがキラリと光った。
その黒い筒は確かにこちらを向いていた。

ガァン…ッ

4センチ程の鉛弾は不二子を交わして次元の脇腹を貫いた。

「っ次元!!」

不二子が鉛弾の飛んできた方向に振り返る前に、次元はマグナムを抜いて引き金を引いた。



「あの後にルパンたちがこなけりゃまずかったな…。」

次元が撃たれた直後、警備から奪ったであろうトラックでルパンが2人を迎えにきた。
急いで乗せられると、次元はそのままアジトへ運ばれた。

「脇腹を撃たれるなんて情けねぇ。」

次元は帽子を前に下げて視界の光を遮り、ゆっくり足を組み直す。

本当なら鉛弾は次元には当たらなかった。
だがそれが不二子を貫くと分かった瞬間、次元の体は反射的に動いたのだ。

コン コン

遠慮がちに部屋のドアがノックされる。

「あいよ。」

「次元、入るわよ?」

救急箱と水、食事を持った不二子がゆっくりと入ってきた。
風呂に入ったわけではなさそうだが、前髪が何処と無く項垂れているように見える。
決して良いとは言えない不二子の顔色を伺うと、次元は不二子を手招きした。

不二子はその動きが視界に入ると、あまり進まぬ顔で次元の近くに寄ってきた。

「わざわざ悪いな。そこに置いといてくれ。」

「……。」

不二子は黙ったまま、水と食事をベッドの隣の棚の上に置いた。

「ルパンと五右ェ門は何してる?まぁ、あとは何とかやっとくからよ、」

「…ごめんなさい。」

次元が驚いて帽子を少し上げると、不二子は俯いて膝の上に固く握った拳を置いていた。

「あたしを庇ったせいで…。」

「何だ、そんなことかよ。」

次元は腕をゆっくり上げて不二子の頭を撫でる。
その時、脇腹に激痛が走ったが、不二子にばれぬよう奥歯で噛み殺した。

「俺が勝手にやったことだ。お前さんが気にするこたねぇ。」

「……あたしが早く気付いていれば…!!」

「気にすんなって言ってんだ。」

不二子が顔を上げると、次元は帽子の下からじっと不二子を見ていた。
その目は鋭くあっても、限りなく優しい色をしていた。

「俺の女が目の前で風穴開けられそうになったから俺が助けた、それだけだ。」

次元は手を不二子の頭から頬へ滑らせ、指先で弄ぶように撫でると優しく微笑んだ。

「ふふ、お前さんはこういう時だけは優しいな。」

「なっ…あたしはいつも優しいわよ!!」

「へいへい。」

不二子が顔を赤らめて言うと、次元は笑いながら小さく頷いた。

「不二子、」

次元はゆっくりと帽子を外した。

「俺の特効薬を知ってんだろ?」

それをくれ、と次元は微笑んだ。
不二子は一瞬「?」を頭に浮かべたが、すぐにその言葉の意味が分かり、また紅潮した。

「…一回だけよ?」

「十分さ。」

不二子は次元の頬に触れ、口付けを交わした。

唇が離れると、次元は口角を上げて弧を描く。

「せっかくの一回がこれで終わりかよ。」

「一回だけって言ったでしょ?」

「深いやつの方が治りは早いんだがな。」

「っ…知らない!」

ふいと顔を背け、不二子は頬を膨らました。

次元はクスクスと笑いながら、痛む脇腹を余所に、不二子の後頭部に手を当て、もう一度優しくキスをした。


-fin-

◯リクエスト第12弾!
「怪我した次元とそれを看病する不二子」です!
怪我ネタが最近多いのは
気のせいかしら…?
何はともあれ、少し血を流すくらいが
好きだったr(ry
リクエストありがとうございました!

Thank you for reading!!


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