Rest In Peace.
※ルパン三世PartV第24話「友よ深く眠れ」のネタバレがあります!ご注意下さい!※
水の張られたプールが赤く染まる。
目の前には身体中穴だらけの、嘗て不空道師のもとで修行を共にした旧友が力なく五右ェ門にもたれ掛かっていた。
「青龍っ…青龍っ!」
五右ェ門は必死に青龍の名を呼んだ。だが青龍は苦しそうに呻くだけ。
「五右ェ…門…。」
「何故…拙者を庇ったりしたのだ…!」
震えた声で五右ェ門が叫ぶと、青龍は顔を上げずに視線だけを五右ェ門によこした。
「五右ェ門…追ってくれ…。谷、山を…俺の一族の仇を…!」
青龍は潰れた声で請った。
五右ェ門は青龍の背中に触れると、そこは鉛に開けられた痛々しい穴が数多にあった。
「…承知した。お主の仇、必ず討ってみせる…!」
すると青龍は微笑んで目を細めた。
「五右ェ門…。」
「もう話すな青龍…っ。」
五右ェ門が一粒の涙を落とすと、青龍は力を振り絞って五右ェ門の肩をもった。
「お前に会えて、嬉しかった…。」
そのまま青龍は目を閉じた。
青龍の細い息が終わりを告げた。
「青龍……っ。」
五右ェ門は水面に浮く青龍の体をきつく抱き締めた。
五右ェ門はルパンによってヘリに乗せられた。
不二子は五右ェ門の傷を見るや否や、急いでアジトに向かうように言う。
「ルパンッ、五右ェ門酷い怪我よ!」
「おい五右ェ門、しっかりしろっ。」
「ルパン…。」
五右ェ門は目を開いてルパンを見る。
ルパンは心配そうに五右ェ門を覗き込んでいた。
「…どうしたっ?」
「谷山を…追ってくれ…っ。」
それを聞いたルパンは目を見開いた。そしてルパンより先に隣にいた不二子が声を出した。
「駄目よっ!こんな怪我でいくなんて危険すぎるわ!」
五右ェ門は激痛の走る体の筋肉をむち打ち、少し身を乗り出した。
「頼む…っ。青龍との…約束があるのだ…っ!」
ルパンは険しい顔のまま、次元に振り返った。
雨はまだ降り続いている。
「次元、ここからどれくらいかかる?」
次元はルパンの方を見ずに時計を確かめた。
「本気か?」
ゆっくり頷くと、ルパンは五右ェ門の頭を優しく撫でた。
「これは五右ェ門と青龍の問題だ。俺達がとやかく言う権利はねぇ。」
「……5分だ。」
「次元っ!!」
不二子が声を張り上げると、何も言わずに次元はスピードを上げた。
「5分以内で力溜めときな、五右ェ門!」
五右ェ門は微かに頭を下げた。
ヘリから降りると、五右ェ門はゆっくり道の真ん中に立った。
「もうすぐで奴等がくる。…無茶はするなよ。」
ルパンはそう言うとヘリに戻った。
「青龍……。」
五右ェ門の体に刻まれた傷は全て青龍がつけたもの。
嘗ては友だったはずの青龍が。
そこから流れる血は全て雨によって流されていく。
「お主が谷山に会わなければ…ここで死ぬこともなかっただろう。」
前方から車のライトが見える。
「だが若しくは今以上に早く逝っていたかもしれぬ。」
車の運転手が表情を歪めた。
「運命など…はかり知れぬものなのだ。」
五右ェ門は斬鉄剣を引き抜いた。
後日、五右ェ門は青龍の遺体を持ち、ある場所へ向かった。
過去に2人が修行をしたあの場所へ。
五右ェ門は青龍を土に還すと、一輪の花を青龍の上に置いた。
「仇は討ったぞ、青龍。」
一吹きの風が寂しく五右ェ門の頬を撫でる。
「今思えば、拙者はお主と本気で戦うべきだったのかもしれぬな…。」
本気で己を狙う者。
だがその人物は己の友、その上ずっと宿敵に騙されていた。
五右ェ門はそんな相手を殺ろうと思えなかった。
「お主が何れ程苦しかったか…。」
五右ェ門は悔しそうにギリ…と歯軋りをした。
また風が吹く。
五右ェ門は顔を上げて一歩下がった。
「だが墓前で情けない顔はできぬ。お主もそれを許さぬだろう?」
一輪の花が揺れる。
五右ェ門は微笑んで花を見た。
「拙者も、お主に会えて良かった。安らかに眠ってくれ。」
一礼だけすると、五右ェ門は体を反転させて歩き出した。
一度も振り返らずに。
雨はもう止んでいる。
一輪の花は、風に吹かれて何度も何度も揺れていた。
-fin-
◯「友よ深く眠れ」のシーンで
無かった所を勝手に妄想して
書いてしまいました。
すごく切ないお話でした。
でも青龍が五右ェ門を庇ったり
最後に無言で去っていく五右ェ門を見たら
本当に感動します(;_;)
青龍が天国でご両親と
仲良くやっていたらいいなと
思っています…。
Thank you for reading!!
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