相談事U

冬の風が窓を悪戯に叩く午後。
五右ェ門はルパンに留守番を頼まれ、仕方なく修行には行かずにアジトで斬鉄剣の手入れをしていた。
ちらりとベランダの窓の奥に浮かぶ空に目をやると、近くに止まっていた雀が羽ばたいていた。
目線を下げると、ベランダの地面には霜が張っている。

「今朝ならきっと価値のある修行になったろうに…。まったくあやつは何処に行っておる。」

ため息をつくと五右ェ門はまた手入れを始めた。

「っ!」

すると急に手入れを止め、斬鉄剣を鞘に戻す。

玄関に何者かがいる。

五右ェ門は近付く足音に耳を傾け、呼吸と気配を消した。
ギィとドアが開くと、そこに立っていた人物は目を丸くして五右ェ門を見ている。

「なぁに五右ェ門。そんな怖い顔しちゃって?」

「不二子殿でござるか。」

五右ェ門は相手が不二子だと分かると、気を張り詰めるのを止めた。
不二子はコートを脱いでキッチンに向かい、コーヒーを挽き始めた。

「ルパンならおらぬぞ。」

「あら、お出かけ中なの?」

「そんなところだ…拙者をわざわざ呼び出しておいて己はぬけぬけと出て行きおったのだ。」

「まぁ可哀想に。それでここにいたのね。」

不二子はマグカップを持ってソファーに胡座をかいている五右ェ門の隣に座った。

「ねぇ五右ェ門。」

「何でござるか?」

不二子に目線を向けると、不二子が着ている服は胸元が大きく開いており、そこから豊満な谷間がこちらを見上げているのに気付いて思わず目を逸らした。

「あら、何でこっち見ないの。」

「な、何でもござらん。して、用は?」

不二子はクスクス笑いながら五右ェ門の肩に手を掛ける。

「五右ェ門はいつから女の子が苦手になったの?」

五右ェ門は驚いたように不二子に向かい合った。

「…それは拙者を愚弄しているのか?」

五右ェ門は少し憤りの色をした目で不二子を睨むが、不二子は眉間に皺を寄せるだけで離れようとはしなかった。

「何でそうなるの。深い意味はないけど…ま、ただの興味よ。だってこれからあなたが誰かと結婚するとしたら、女嫌いは治しとかなきゃダメでしょ?」

「む……。」

五右ェ門は身動ぎ、困惑の表情でまた目を逸らした。

「きっかけとかあったの?物心ついた時からとか?」

「いや…幼少の頃はそれほど…。」

「じゃあいつから?」

五右ェ門は斬鉄剣を手にかける。
ゆっくりそれを鞘から抜くと、先から目を通した。

「拙者がまだ師の下にいた頃だろうか。女は敵であると深く教え込まれた。」

「どうして?」

「殺し屋が女に現を抜かすようなことがあってはならぬからだ。」

殺し屋に殺されぬよう、相手によっては女で騙してくる者もいる。そういう時に手玉にとられては元も子もない。
五右ェ門は斬鉄剣の小さな傷を懐かしむような、哀れむような目で見つめて鞘にしまった。

「例え拙者を殺そうとしていたとしても、殺しの基礎を拙者に教訓したのは今は亡き師。その師に対する最後の自己満足の謝礼かもしれぬな。」

不二子は黙ってそれを見ていた。
すると不二子はマグカップをテーブルに置き、両手で五右ェ門の頬に触れる。
五右ェ門は紅潮し、退いたが不二子は離さなかった。
不二子はまっすぐ五右ェ門を見つめると、きゅっと手に力がこもる。

「あのね五右ェ門。あなたの自己満足をわざわざ止めることなんてしないけど、それであなた自身が損してるんなら、それを貫き通す必要なんて無いわ!」

五右ェ門は口を少し開けたまま不二子を見る。

「はっきり言って容姿もいいし、女の子に引っ掛けられることもあったじゃない。あまりうまくいったことはなかったけど、それがその自己満足が原因なら捨てた方がマシよ。過去にお世話になった人から学んだものを全て捨てろなんて言ってないの。でも、これからあなたが出会い、もしかすると将来を共にする女の子の為を思ってみなさい。」

不二子はゆっくり手を離した。そして優しく微笑むと、斬鉄剣に触れる。

「そしてこれは、その大切な女の子を守れるようになるためのものにしてね。」

五右ェ門は不二子を見て、同じように微笑み、頭を下げた。

「ありがとう、不二子殿。」

「ふふ、いいわよ。あたしも応援してるわ。」

ベランダに先ほどの雀がいる。
仲が良さそうに身を擦り寄せていた。

「じゃあ五右ェ門、早速特訓しましょっか♪」

「は?特訓?」

「そ。いつそういう状況になっても良いようにってね♪」

「なっ…ま、待て不二子!」

「手伝ってあげるんだから感謝してよ?」

「そのような助けは要らぬ!!」

不二子は五右ェ門の頬にキスを落とすと、五右ェ門に抱きついた。


-fin-

◯リクエスト第9弾!
「姉弟の不二子と五右ェ門」です♪
いかがでしたか?
これは「五+不」であって決して
「五×不」ではありませぬ(笑)
あと五右ェ門の女嫌いの理由も
勝手に作らせて頂きましたっ(汗)
多分こんな理由ではないです(-_-;)
題名は以前にも五右ェ門が
不二子ちゃんに相談をした話が
あったので(*´∀`*)
リクエストありがとうございました!

Thank you for reading!!


[back][next]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -