肩からの温もり
「もうっ、どこにいても敵ばっかりじゃないの!」
「そう怒るなって。相手が悪かったんだ。」
今夜の目当てのものは国王の補佐官が隠し持っているという大金。
王には秘密で、裏社会で違法な金儲けをしているらしいその補佐官はその大金を公にしないように、呪いの森と呼ばれる森の奥深くに潜めたということを知り、ルパン一味はそれを頂きに森へと入り込んだ。
何でも、その森に入ってしまって、出てきた者は1人もいないという。
いつものように二手に分かれ、ルパンの合図次第乗り込もうとしていたが、想像以上に警備が厳重で、補佐官に雇われた人間たちが森の中をウロウロしていた。
「森に入ったヤツはもう出られないって、これが種明かしかよ。」
次元は不二子と草むらに隠れながら警備の人間たちに最大の注意を払っていた。
「それでどうするの?このままじゃあたしたちも動けないわよ。」
目の前にある大金に触れることすら出来ないのが悔しいのか、不二子は少し苛立ちながら次元を見上げた。
「うーん…確かにな。」
次元が首を傾げていると、手に付けていた、ルパン特製小型携帯機能付き腕時計がピカピカと赤くランプが光った。
次元はランプの下のボタンを押して、声を潜めながら腕時計に口を近付けた。
「どうしたルパン。」
すると腕時計からルパンの声が聞こえてきた。
『いやぁ〜、大金はすぐそこなんだけっどもな、働き蜂ちゃんたちがそりゃもうわんさかいるわけよ。』
「下手に出たら俺たちが蜂の巣にされるってわけか。」
『そゆこと。だから悪いんだけど今夜はそこで過ごして朝に襲撃しない?』
すると隣でそれを聞いていた不二子が身を乗り出して、腕時計のついている方の次元の腕を引っ張った。
「ちょっとルパン!こんな所で野宿なんて危なすぎるじゃない!」
『あらま不二子。でもねぇ、今もまだ見つかってないんだろ?あいつらは指示通りにしか動いてないみたいだから大丈夫だって。今次元と不二子がいる所は死角になってるはずだよ。』
次元はため息をついてもう一度辺りを見回すと、不二子の肩を叩いた。
「向こうに小さいが洞穴がある。そこに行くぞ。」
『おっ、助かるねーさすが相棒。じゃ、不二子頼んだわ。』
「えっ!ルパン!」
ばぁい♪と、ルパンとの会話は途切れた。
次元は敵の動きを見ながら不二子を連れて洞穴へ向かった。
「おい。」
「………。」
「何怒ってんだ?ルパンのことか?」
「当たり前でしょ!せっかくお金が貰えるって聞いてたのに、どうしてこんな所で野宿しなきゃいけないのよ!」
次元と不二子は洞穴で向かい合うように壁にもたれて腰掛けていた。敵にばれないように、小さくだが火も灯している。
「仕方ねーだろ。こいつは予想外の誤算だったんだ。」
次元が木の枝に火を灯し、それでタバコに火をつけた。
「やっぱりはじめっからマシンガン用意してたら良かったのよ…。」
ぶつぶつと言いながら不二子は横になった。
「床、冷たいわ。」
「洞穴だからな。体温で温めた壁にもたれてた方がいいぜ。」
すると不二子は体を起こしてもう一度壁にもたれ、ゆっくり目を瞑った。
「寝るのか?」
「他にすることがないんだもの。それになんだか疲れたし…。」
「明日は早いらしいしな。そうならさっさと寝ちまいな。」
「……。」
しばらくすると、不二子はすうすうと寝息を立て始めた。
次元は短くなったタバコを揉み消し、立ち上がって不二子に近寄った。
「…っくしゅん!」
すると不二子は膝を抱えたままくしゃみをした。次元は一瞬驚いたが、ジャケットを脱いで不二子の隣に座る。
そして不二子にジャケットをゆっくり羽織らせると、次元も目を瞑った。
「ん……。」
急な温もりが違和感だったのか、不二子は少し身動いで次元にもたれ掛かった。
次元は目を丸くしたが、優しく微笑んで肩を引き寄せた。
その夜不二子が見た夢は、今までで一番優しい夢だった。
-fin-
◯リクエスト第8弾!
「不器用な優しさの次元」でした*
ふ…普通なお話に…!(泣)
せっかくリクエスト頂いたのに
申し訳ありません(;_;)
今後またリベンジできれば
やらせていただきます!
リクエストありがとうございました♪
Thank you for reading!!
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