研がれ、磨かれ
「しっかし五右ェ門も丸くなったよなー。」
ソファーに寝転がって窓から見える空を見上げながらルパンは足を上にあげながらぼやいた。
「何だ?急に。」
テーブルで銃の手入れをしながら次元は答えた。ルパンは起き上がって次元の隣の椅子に腰掛けた。
「だってよ?初めて会った時はあーんな殺意むき出しでいたくせによ、今じゃ女に現をぬかすときだってあるじゃねーか。やっぱ人間ってのは変わるもんだねー次元…ってまぁお前も変わったけっどもな!」
ルパンは笑いながら次元の頬を指で差した。
「そりゃな。お前みたいな変な奴といりゃあ誰だって少しは変化を見せるさ。」
オイルで汚れたガーゼを、頬を差してきた手の甲に乗せながら次元も笑う。そのガーゼを受けとると、ルパンはひじをついてヒラヒラとそれを揺らした。
「あらま。それはどう受けとればいいの?」
「誉め言葉さ。」
「そりゃどーも。」
次元は銃弾の箱を取りだし、弾をリボルバーにつめようとすると昨日の五右ェ門との会話を思い出した。
「次元、1つ聞きたい事があるのだがいいか?」
次元が銃の手入れをしていると五右ェ門がリビングに入ってきてソファーに腰掛けた。
「おう、どうした?」
五右ェ門を一度だけ見ると次元はまた銃を磨き始める。
「お主は、何故ルパンと共にいるのだ?」
「……は?」
あまりに唐突な問いに次元は五右ェ門を見る。五右ェ門は真っ直ぐ次元を見ていた。
「お主は昔拙者のような殺し屋であったと聞く。そのお主が今このよう平和な暮らしにいれるのが拙者は不思議に思うのだ。」
同じ立場であったからこそ浮かぶ疑問。次元は黙って銃を磨いていたが、小さくため息を吐き、天井を見上げた。
「何でだろうな。それは俺にもわかんねぇよ。でもな、あいつに会った時、何年ぶりか俺はすげぇ笑ったんだ。それがなんつーか…嬉しいっていうより、気持ち悪かった。今までに無かったもんが急に生えてきてよ、でもそれが嫌じゃなかったんだよな。」
五右ェ門は眉1つ変えずに次元の話を聞いていた。次元の頭にはルパンと初めて会ったときのことが思い出されていた。
「来んなっつっても来るし、やんなっつってもやるし、助けんなっつっても…あいつは助ける。形に見える理由なんてのは無いけどな、俺はあいつに相棒って呼ばれてからずっとそう生きてきた。これからもそう生きていくつもりだよ。」
銃を磨き終えると次元は一発だけ弾の入ったシリンダーをはめて、五右ェ門に銃口を向けた。
「まぁ、お前さんもそんな感じだろ?五右ェ門。」
五右ェ門は小さく笑った。
「…左様。お主と考えが同じであるかどうかと試しに聞いてみたのだ。」
五右ェ門が立ち上がると次元は引き金を引いた。
ガァァン…ッ
次元によって放たれた弾は、素早く抜かれた五右ェ門の斬鉄剣に弾かれた。
「相変わらず腕は劣ってねぇみたいだな。」
「拙者の斬鉄剣をなめるな。」
五右ェ門が斬鉄剣を鞘に戻すと、五右ェ門の足元には、3つに斬られた弾が光っていた。
「そういや今日の晩御飯は何ー?俺エビフライがいいなー!」
次元の目の前には猿顔をした今世紀の大泥棒がいる。
「あほか。何でわざわざ俺が海老料理を作らなきゃならねぇ。今日は蟹鍋だ。」
「きゃーっ豪華じゃねーのー!不二子ちゃんも呼ぼーっと!」
ルパンはいそいそと不二子に電話をかけた。
次元は弾にキスをしてシリンダーに入れ、銃にはめる。
今まで研ぎすぎて傷だらけだった刃は、磨くと予想外にも美しく輝いていた。
「昔の俺に『将来の次元大介は世界の大泥棒、ルパン三世の相棒となって蟹鍋を食っている』って言やぁ、どんな顔すんだろな。」
次元は微笑みながら銃口を窓から空へ向けた。
-fin-
◯ファミリーの和やかなお話。
昔の次元が『相棒』と呼ばれたら
きっと目を丸くするでしょうね。
3人は互いが大好きなんだろな(^^)
しかし蟹鍋は豪華すぎたかな…
Thank you for reading!!
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