衣替え

青いシャツを羽織り、深緑色のスラックスをはいて、黒ネクタイを締めたらスラックスと同じ色のジャケットに袖を通す。
いつもの服に着替えを終えると次元は前髪をセットするため、リビングから出ようとした。
その時、痛い程の強い視線を感じた。
振り向くとそこにはダイニングテーブルで肘をついて、こちらを凝視している不二子がいた。

「……何だ?」

困惑の表情を浮かべ、次元は不二子の行動に疑問を持つ。
何か気に障ることでもしただろうか。いや、昨夜は夜を共にしていないし何も変わったことはしていない…はずだ。
だが黙って見つめる不二子は怒っているようには見えなかった。怒る…というより、不思議そうな顔をしていた。

「貴方ってずっとその服よね。変えないの?」

「…は?」

開かれた不二子の口から出た言葉は次元を呆気にとらせた。
服装のことを言われるなど、考えてもいなかったからだ。

「まぁ、ルパンと会う前からこれでずっと生きてきたからな。何かとやり易いんだよ。今更変えるつもりはねぇが…何でだ?」

ジャケットの裾を持ってパタパタと動かす。
すると不二子は首を傾げた。

「ルパンも五右ェ門も形は変えなくても、色は変えてるわよ?貴方も衣替えしてみたら?」

不二子は本音を言うと、黒や深緑などの、比較的暗い色ではない色の服を着た次元を見てみたかったのだ。
だが直接それを言うのはどこか気恥ずかしく、遠回しに『衣替え』と言い換えて話題を持ちかけた。

「衣替えねぇ。お前さんはどんな色がいいんだ?」

次元は笑ってジャケットを脱いだ。
不二子の心臓が跳ねる。
心を読まれたと思い焦ったが、いつもの表情は崩さなかった。

「そうね。貴方なら青とかが似合うんじゃない?」

少しからかったつもりで不二子は言った。だが次元はあぁ、と納得し、クローゼットをあさり始めた。
驚愕した面持ちで不二子は次元を観察していた。
青いジャケットを出すと、次元はくるりと振り向いた。

「シャツは何色がいいと思う?」

少し楽しそうに次元は青いジャケットを自分の体に重ねる。
その行動が子供のようで、不二子からふいに笑みが溢れた。

「オレンジとかが合うわよ。」

「オレンジな。あったかねー。」

また次元はクローゼットをあさる。
奥の方からオレンジのシャツを取り出すと、次元はそれをソファーに置き、着替え始める。不二子はお楽しみのために目を軽く瞑っていた。

「どうだ?不二子。」

不二子が目を開けると、いつもと違う格好の次元が立っていた。その服は予想外にも似合っていて、不二子は不覚にも見とれてしまっていた。
次元はそれに気付き、ニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。

「……なんだ、見とれたか?」

すると不二子は紅潮し、顔を背けた。

「だっ誰がよ!自惚れないで!」

「ハイハイ、顔色は正直だがな。真っ赤。」

「〜〜っバカ!」

次元はクスクス笑いながら鏡の前に立つ。ネクタイを締め直し、ジャケットと同じ色の帽子を手に取った。
そして不二子に近付き、それを被せる。

「きゃっ…何?」

次元の突然の行為に不二子は顔を上げた。
その瞬間、次元は右手で不二子の顎を優しく掴み、自分の唇と不二子のとを重ねさせた。

「コーディネートしてくれたご褒美だ。また頼むぜ。」

不二子から離れると、次元は微笑んでリビングから出ていった。

「……かっこいいなんて、言ってあげないんだから。」

不二子は嬉しそうに帽子を外して軽く抱き締めた。


-fin-

◯パースリでの次元の服が
好きなので勝手に過程を
考えてみました。
仮定の過程です(笑)
パースリの次元はかっこよすぎる…
不二子ちゃんも可愛い♪
何より配色がすごくお洒落。
ピンクジャケットなんて
ルパン以外着れないよ…(゚゚)

Thank you for reading!!


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