月の咲き誇る宵にて
「んまぁ〜綺麗な満月だなぁ♪もんごえ、今夜は十五夜?」
ルパンがベランダに出て空に浮かぶ満月を眺める。
五右ェ門も、背を向けていたベランダに振り向き、夜空を見上げた。
「そのようでござるな。美しい月だ…。」
薄黄に淡く輝いている丸い月。
五右ェ門はゆっくり立ち上がり、横を向いてベランダの縁に腰掛けた。
「寒くねぇのか?んなとこいると風邪引くぞ。」
3つのホットコーヒーを持って次元は2人に声をかけた。1つはルパンに渡し、もう1つは五右ェ門に渡して自分もベランダの近くにある椅子に座る。
ルパンはホットコーヒーを啜り、白い息をはいた。それはコーヒーの湯気と混ざって冷たい夜風に拐われた。
「いいじゃねぇのーたまには。あっつい夏よりこんな寒い時の方が、夜景は綺麗なんだからよ。」
コーヒーカップを覗き、少しイビツに映る月を眺める。
「太陽の光のお陰で輝くってよ、なんか切ないと思わねぇ?」
コーヒーカップを見たままルパンは呟いた。
太陽の光が無ければ、月は発光性のないただの惑星として闇の宇宙へ溶けてしまっていたはず。それが太陽の光のお陰で、地球という惑星からでも形が分かるほど光り輝くことができる。
光のお陰で闇から逃れられた。
人々はそう言う。
「綺麗事は言えないんだよな。やっぱどんな世界でも光が正義、影は悪。万物の理には逆らえない。」
空を見上げる。
悲しげに光る満月が3人を優しく見下していた。
次元はコーヒーを啜り、コーヒーカップを覗く。五右ェ門は月を見上げた。
「何の夢見たか知らねぇが…お前にそういう台詞は似合わねぇぞ。」
次元はコーヒーを床に置き、手を頭の後ろで組んで椅子にもたれかかった。
ルパンは振り向いて次元と五右ェ門を見る。
五右ェ門は俯いて口を開く。
「輝くのは確かに太陽が在るからだ。だが、その儚い輝きを見せれるのは闇の夜空の存在あっての事ではないか?」
コーヒーを一口飲み、ルパンを見る。ルパンは驚いたような顔でベランダの柵にもたれていた。
「それにお天道様ほど輝いてちゃ見えるもんも見えねぇさ。暗闇からなら小さな光も見つけられる。」
帽子の下から次元は微笑んでルパンに目を向ける。
ルパンは俯き、ハハッと少し潤んだ声で笑う。
「なんだなんだ、お前らいつの間にそんなにロマンチストになったの。」
「次元という男がいるせいだ。拙者のせいではござらん。」
「何だよ、俺のせいか?」
3人はハハハと笑い、白い息が交わった。
ルパンは2人に近付き、冷めたコーヒーの入ったカップを差し出した。
「じゃあ、月だけが知る本当の影の集いに。」
次元と五右ェ門は微笑んでコーヒーカップを前に出す。
「乾杯。」
3人のカップに小さな光が揺れる。
夜空に浮かぶ満月は、小さな影の3人を優しく見守っていた。
-fin-
◯またもや冬ストーリー。
若干病み気味になってしまうのが
否めない…(´;ω;`)
でも闇に生きていた
人たちだからこそ
色んなことを見たと
思うんです、
痛みとか幸せとか…。
Thank you for reading!!
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