理不尽なお仕置き

─ガヤガヤ─

とある豪華客船、ルパン一味は毎度のように容易にそこへ侵入し、お目当ての宝を探していた。
今回はその豪華客船は、世界中の金持ちだけが乗っているものだった。だがその金持ちも違法な真似で金儲けをした者しかおらず、船内ではポーカーやダーツなどのカジノが繰り広げられていた。なので見た目上の問題で、客になりきるのは不二子だけにし、ルパンたちは船で働く側に変装する作戦である。ルパンは船員、五右ェ門は警備員、そして次元は接客員になっていた。

「ったく、こうも金持ちしかいねぇと無性に腹が立つな。」

ぶつぶつ文句を言いながら次元が乗員にシャンパンを配っていた。カチッとしたスーツに身を包み、後ろ髪も1つにまとめて前髪はワックスでオールバックにしているが、一束だけ前に下ろしていた。
宝のありかはルパンが知っているので、3人はルパンから合図があるまで自分の役になりきっていてほしいとのこと。
次元はシャンパンを配ってはチップをもらい、それを仕方なしに胸ポケットに入れていた。
ため息をついた時、何処からか大きな物音が聞こえた。

ガシャーンッ

「ってぇな!そこまですんなよ!」

どうやら客同士の喧嘩のようだ。次元は争い事には巻き込まれたくないため、その場を離れようとしたが、聞いた事のある声が鼓膜を叩いた。

「ごめんなさぁい?でも貴方が急に体を触ってきたりするからでしょ?」

「(不二子!?)」

その喧嘩とは、乗船していた株式会社社長の若い息子と、海外の有名ブランド会社の社長…という設定になっている不二子だった。
見る限りその男は相当酔っており、悪のりで不二子の体に触れたらしい。

「んな格好しててよく言うぜっ。他の奴らだってお前に触りてぇはずだけどな?」

男が大声で言うと、周りにいた男共の視線が不二子に移るのが分かった。
気づけば近くにいる男全員が不二子を見ている。

「なぁ?金ならやるから俺達と遊ばせろよ!」

そう言って俺達は不二子に襲いかかった。周りの女は悲鳴を上げるだけだった。
その瞬間、ガガッと無線の入る音がした。

ガァンッ…

一発の銃声が辺りを響かせる。不二子の真ん前にいた男は、いつの間にか地に伏していた。
不二子は、その銃声より少し前に隣にいた男に、片腕で抱き締められていた。

「次元…。」

次元は銃口を上に向け、銃声を鳴らしただけだった。つまり目の前の男は次元の体術で気を失ったのだ。
あまりに一瞬の出来事で、周りの男や観衆、不二子までもが何が起こったか分からなかった。

「お前は短気過ぎんだよ。」

「あら、私が他の男に触られてもいいの?」

不二子が上目遣いで次元を見上げると、次元もいつもなら帽子で隠れている切れ長の目で不二子を見る。

「良いならわざわざ助けるか、ばかやろ。ルパンから聞こえたか?」

「えぇ、上手く盗めたみたいね。それじゃ、逃げましょうか?」

「大暴れしながらなっ。」

そう言うと、次元はスーツの下に隠していたハットを被る。煙草をくわえ、火をつけると次元は口角を上げ、もう一度銃声を放った。



船が沈没する前に、ルパンたちは乗客が持っていた金も頂き、先ほど不二子にちょっかいをかけた男のヘリコプターに乗って逃げた。

「今日はたっくさん暴れたなーっ♪」

ルパンが何故か鼻歌を歌いながらヘリコプターを操縦する。左には五右ェ門が座り、窓から豪華客船を見た。

「あの船はどうするのだ?」

大暴れした挙げ句、用意していたヘリコプターも奪い、脱出用のボートは全て五右ェ門が斬ってしまったので、乗客は船に取り残されてしまっていた。

「大丈夫大丈夫!さっきルパンが現れたって船長みたいな人が警察に連絡入れてたからさ、とっつぁんとかがお迎えに来てくれるだろー。」

「はっ、墓穴ほりやがったな。」

後ろで次元が鼻で笑う。その時、不二子は珍しく黙っていた。そして目で次元に話しかける。

「(手、どけなさいよ。)」

ヘリコプターに乗ってから、次元は背もたれに腕をまわしているように見せかけて、右手は不二子の肩にのせていた。

「(やなこった。)」

まるで子供のように舌を出してみせると、不二子はため息をついた。

本当は、ずっと不二子が心配だった。まぁ、この女に心配するなんて野暮だとは分かっていたが、不二子の隣を通りかかる奴ら全員がこいつを獣の目で見ていた。全く、そんな事には気付きもしねぇでぬけぬけと他の男と話しやがって。

次元は右手を不二子の肩から浮かせ、不二子の耳を触った。

「っ!!」

一瞬驚いたが、不二子は次元を睨んで、目で反論した。

「(ルパンにバレたらどうするのよ。)」

「(バレなきゃいいだろ。)」

次元は手を止めずに触り続ける。耳たぶをつまみ、指の腹で撫でるとそのまま滑らせて耳の裏に回る。
ただ耳を触られているだけだというのに、不二子はどうしようもなく反応している自分に腹が立った。

「おい不二子、さっき言ってた話だがな。」

急に次元が声を発し、不二子の方を見ると、不二子が何かを言おうとする前に耳元に口を寄せた。

「他の男に触られた罰だ。今夜は寝れねぇと思っとけ。」

「なっ…!!」

小声でそう言うと、不二子の耳元でわざとリップ音を立てて口を離した。

「どしたん?不二子ちゃん。」

操縦中のルパンが鏡越し不二子に目をやると、不二子は作り笑顔で首を振った。

「なっ何でもないわよ!」

隣でにやつきながら座っている変態ガンマンに気付き、五右ェ門は重いため息をついた。

-fin-

◯お宝の正体がわからないまま
終わらせてしまいました…。
次元の接客員のスタイルは
私の好みが入っちゃいました^^;
次こそはシリアスなお話を…!

Thank you for reading!!


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