逃がした魚の贈り物

「待ぁてルパーーン!!」

「あーばよー!とっつぁーんっ。」

ルパンはヘリコプターに乗り、空高く消えてしまった。

「くそーっ!今日こそは挟み撃ちできるかと思い、わざわざ偽装車まで用意したというのに…次元がいなかったのはヘリのためかー!」

地団駄を踏みながら銭形が悔しがっていると、1人の警察官が銭形の元へ来た。

「失礼します警部!先ほどルパンから警部に向けて挑戦状と思われる紙を発見致しました!」

「なっ何ぃ?!早く見せろ!」

警察官が銭形に手紙を渡すと、銭形はゆっくりそれを開け、中身を確認した。

「何々?えー…。」

『とっつぁん!
今日もなかなかいい勘
してたぜー?
そこでだ、いつも頑張って
俺を追っかけるあんたに
プレゼントを送ってやるよ!
いつ、何が届くかは
楽しみにしとけよなー♪

ルパン三世』

名前の隣には、いつもの似顔絵が書かれていた。

「くぅ〜馬鹿にしよって!どうせルパンのことだ、また明日現れるに決まってる!引き続きここの張り込みをするぞ!怪しい奴はルパンかもしれんっ、絶対に逃がすなー!」

「はっ!!」

銭形が近くにいる警察官全員に命令を下すと、警察官は一斉に敬礼して持ち場に戻った。

「こちら五右ェ門、ルパン聞こえるか?」

警察官の1人が片耳を押さえながら小声で言った。その警察官は変装した五右ェ門だった。

『聞こえてるよー。とっつぁん、俺が明日来るって分かったみたいね?』

五右ェ門の無線の先にはルパンがいた。五右ェ門は銭形に目をやりながらその場を離れた。

「どうする?やはり明日決行か?」

『もっちろん!期待には応えてあげなくちゃ♪』

五右ェ門はため息をついて路地裏に入る。そして一瞬で警察官の服を脱ぎ、いつもの格好で人混みの中へ潜り込んだ。

「承知、では今から戻る。」

そう言うと五右ェ門は無線を切った。


「五右ェ門、うまくいったか?」

既にアジトへ戻ったルパン、次元、不二子はダイニングテーブル何かを熱心に作りながら五右ェ門の帰りを待った。

「バッチリ!あとはこれが完成して、明日になるのを待つだけだなー。」

ルパンが無線を外して、次元と不二子の方へ歩みよった。

「でもどうして急にこんなこと考えたの?銭形への謝罪のつもり?」

不二子が不満というより、若干不思議そうにルパンを見る。ルパンは肩を揺らしてへらへらと笑いながら、不二子の隣に座った。

「それが違うんだなー。謝罪じゃなくて感謝のつもりなの。」

不二子に肩を組むと次元の作った小さなプレゼントの箱を手に取った。

「明日とっつぁん、どんな顔すっかなー?ぬふふふふー♪」

ルパンは悪そうな笑みを浮かべながらそのプレゼントを電球にかざした。


午後11時。

真夜中に銭形は他の警察官とともに、6時間ほど前にルパンが来たビルの張り込みを続けていた。
夜はなかなか冷えて、何度もくしゃみをしながら銭形はうろうろと動き回っていた。
その時近くにいた警察官が銭形に声をかける。

「警部、良ければもう休んで下さい。昨日からずっとお休みになられていないじゃないですか。」

まだ若そうな警察官に心配をさせてしまったと思い、銭形は大袈裟に元気さを装った。

「いやっ、ルパンを捕まえるのはわしの仕事だ。何があってもわしの手でお縄にかけねばならん。」

そういうと銭形はまたうろつき始めた。
ふと腕時計を見ると、もう12時になろうとしていた。銭形は夜空を見上げて、鼻から冷えた空気を吸い込んだ。鼻腔には少し刺激の強い空気が通り抜ける。


「わしが休んで、誰がルパンを捕まえるというのだ。」

銭形の目線の先の星が瞬くと同時に、時計の針が12時をさした。

バンッバンッバンッ

その時、何処からか風船の割れるような爆音が夜を轟かせた。
周りの警察官は驚いて辺りを見回す。銭形も首を回すと、宙に何かが浮いているのに気付いた。

「何だあれは!?」

咄嗟にビルの屋上にいた警察官がそれにライトを当てる。すると宙に浮いていたものはヘリコプターで、左右に大きな風船のようなものを付けていた。ヘリコプターの操縦士はゴーグルを外し、銭形にウインクをした。瞬間、銭形は操縦士が誰かすぐに分かった。

「とっつぁーん!また来ちまったぜー!」

「ルパン?!よしっ、撃てー!」

銭形が命令すると、警察官は一斉に銃でルパンの乗るヘリコプターを狙って撃ち始めた。
だがルパンの巧みな操縦によってなかなか弾は当たらなかった。ルパンはちらりと後ろに目線を送り、合図をした。

「んじゃ次元、五右ェ門。撒いちゃって♪」

「あいよ。」

「承知。」

すると次元と五右ェ門が顔を出し、次元は何やらヘリコプターに積んでいた袋を開け、中身を下にばらまいた。五右ェ門はヘリコプターから出て、両羽に付けていた袋を斬鉄剣で切った。

「警部!ルパンたちが何かを落としてきます!」

「何だ?爆弾か!?」

銭形が素早く空中で、落ちてきた小さな箱をコルトガバメントで撃ち抜く。すると箱は破裂して、中からカラフルな紙が散らばって落ちてきた。

「んなぁ?!」

色とりどりの紙にまとわれ、銭形は驚きを隠せなかった。しかもよく見るとその箱はプレゼントのような形をしていた。その他に色とりどりの風船も落ちてきた。
ヘリコプターからはまだまだ落ちてきて、警備についてきた警察官もどうすればいいか分からず戸惑っていた。

「とっつぁん!今日は何の日か思い出させてやるよー!」

ぐるぐるとヘリコプターでビルの周りを飛んでいたルパンが言うと、今までで一番大きなプレゼントの箱を落とした。
それは地につく前に破裂し、大きな幕を吊るした風船がゆっくり銭形の方へ落ちていった。

「どわぁ!な、何だこれは〜?!」

銭形は幕の下敷きになって、バタバタともがく。
その幕には
『HAPPY BIRTHDAY ZENIGATA!!』
と記されていた。

「とっつぁーん、誕生日おめでとさーん!」

そういうと、プレゼントを撒き散らせながらヘリコプターは去っていった。

辺りはプレゼントの山。どう考えても後片付けが大変なのは目に見えていた。だが銭形の目からは、憤怒の色は見えなかった。
幕に覆われ、地に這いながら幕から出ると銭形の前にある婦人警官が立っていた。

「警部、これを。」

婦人警官は銭形の前に小さな箱を置いた。

「これは?」

疑いの眼差しで箱を見て、婦人警官に目をうつすとその婦人警官は眼鏡を外してウインクをした。

「ルパンからよ、銭形さん♪」

「みっ、峰不二子ー!?」

不二子は投げキッスをすると、そのまま近くにあったオートバイに乗って去っていってしまった。
銭形は不二子を追いかけようとしたが、置かれたプレゼントが気になってその場に胡座をかいて座り込み、箱の紐をといた。
するとびっくり箱のようにルパンの似顔絵が飛び出し、何やら音声が聞こえてきた。

「とっつぁん誕生日おめでとう!今年は俺たちが盛大に祝ってやったぜー。これからも俺はあんたから逃げ切ってやっかんな♪まっ、そういうわけで長生きしてくれよー!」

それだけ言うとルパンの声は途切れ、誕生日の音楽が流れ始めた。
銭形がそれをポケットに入れると、銭形の後ろから警官が走ってきた。

「警部!ルパン一味はヘリコプターで西の方へ逃げ、ただいま逃走を続けているそうです!こちらも一台ヘリを飛ばしています、直ちに我々も向かいましょう!」

銭形は振り向き、ルパンが落としていったプレゼントを片付けている警官たちにその場を任せ、用意されているヘリに向かった。

「良くやった!では今からルパンを追跡する!ここはお前たちに任せるぞっ。全て片付けた後に撤退しろ!」

「はっ!!」

銭形はヘリコプターに乗り込み、空高く飛び上がった。
銭形は窓から夜空を見上げ、小さく鼻歌を歌った。


-fin-

◯とっつぁん中心です(^^)
ファミリーはとっつぁんが
きっと好きというお話。
ファミリーは勿論だけど
とっつぁんがいなくちゃ
ルパン自身、盗みとかが
楽しくないんじゃないかな(..)?
そしてとっつぁんの誕生日って…?

Thank you for reading!!


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