男の作戦-Love with your cocktail-
※ちょっとパロディです。次元がバーテンダーでレッディが客です。少しでもパロディが苦手な方はご注意を!!※
陽と別れを告げて数刻。
太陽の後を追う月が夜空で彷徨う時、レッディは一人洒落た小さなバーに足を運んだ。
カラン、と小ぢんまりとした店内に響く木のベルの音。
それと同時にグラスを磨いていた店主がこちらをちらりと見て小さく会釈した。
「いらっしゃいませ。」
レッディは店主の前のカウンターに座り、赤いPコートを脱いだ。
「お飲物は。」
落ち着いた声色で店主が問うと、レッディは悩む素振りも見せずに店主に微笑みかける。
「アラスカ。」
「かしこまりました。」
店主は磨いていたグラスを置き、少しレッディから離れた。
レッディがその店主を見、エナメルのクラッチバックから口紅を取り出す。
コートと同じ色をした口紅を一度唇に当て、弧を描いて濃くその色を口元に現した。
微かな笑みを見せながら口紅を直すと、レッディの前にパリジャンの入ったカクテルグラスが置かれた。
「?」
不思議そうに店主を見上げると、店主は左を手で差した。
「あちらのお客様からです。」
店主が差した方向を見ると、そこには見知らぬ男がこちらを向いて微笑んでいた。
レッディと目が合うと、その男は席を立ってレッディの隣へ歩み寄る。
どちらかと言えば長髪の茶色掛かった綺麗な髪に、透き通るような碧眼。
見たことない人物ではあったが美しい容貌と優しい瞳に、無視するのは失礼だと思いレッディは一先ず微笑んでお礼を言った。
「ありがとう。」
「いえいえ、1人なの?」
「隣が埋まってるように見える?」
くすくすと笑いながら言うと、男は肩を揺らして目を細めた。
「俺の目では見えないな。」
一口パリジャンを飲むふりをして、レッディは店主に目を向ける。
店主は何も作らずただグラスを拭いていた。
「良かったらあっちで一緒に飲まない?」
男がレッディの目をまっすぐ見ながら手をそっと握ると、レッディは嘲笑うような誤魔化すような目で笑う。
「もう飲んでるじゃないか。」
男は苦笑することしかできず、些かしどろもどろに何かを言っていた。
だがそんな男の言葉はレッディの耳には届いていない。
「でも、ごめんね。今はいないけど男はいるんだ。」
男が肩を落として店を出ていくと、店主はグラスから目を逸らしてレッディを見る。
「よろしいのですか?」
「何が?」
きょとんとしたように聞くと、店主は先ほどの男を憐れむようにドアに目を向ける。
「あの男性、貴女に一目惚れなさってましたよ。」
グラスを直し、店主が新しい飲み物を作り始めるとレッディはあの男に貰ったパリジャンを一口飲む。
「あたいがあの男についていけば、許さない男が目の前にいるからね。」
カクテルの香りを漂わしながら艶やかなため息をつく。
他にもカクテルを飲んでいる客はいるはずなのに、店主にはレッディの飲むパリジャンのカシスの香りしか感じられなかった。
その事を自覚すると、店主は自身に苦笑しながら頷く。
「よく御存じで。」
数刻経ち、レッディは白い肌を少しだけ火照らせ手を組んで両肘をつく。
「ねぇマスター。一緒に飲まないかい?」
「仕事中ですので。」
「お堅いこと。でも嫌いじゃないよ。」
一杯しか飲んでいないというのに、微かな眠気が襲ってくる。
あの男、パリジャンにやっぱり何か入れてた…。
当の本人がいないため落ち着いて飲んでいたが、男の入れた睡眠薬はレッディを逃がさなかった。
うとうとと落ちてくる瞼で視界が阻まれる中、とん、と新しい飲み物が置かれた。
「次は誰?」
店主を見上げて問うと、店主はレッディのすぐ右隣りを指差した。
「こちらのお客様からです。」
そこにはいつの間にか置かれていた、見慣れた深緑色のボルサリーノ。
店主は続けた。
「この男性が仰るに『後で良ければ一緒に飲まないか?』と。」
店主が微笑むと、レッディも優しく笑った。
「…喜んで。」
店主が時計をちらりと見ると、レッディはとろんとした瞳で店主を見上げる。
「マスター、その男に伝言頼まれてくれないかい?」
店主がレッディに目を向けた。
「『なら、あんたのスプモーニが飲みたいな』って。」
目を丸くして店主がグラスを磨く手を止める。
その直後、ゆっくり頷いた。
「確かに承りました。」
愛しい彼女が夢に落ちる頃、店主はシェイカーを持ち甘いスプモーニを作り始めていた。
-fin-
○ホワイトデーのお話です!
ホワイトデー関係ない…無さすぎる(涙)
スプモーニがお返しということで←
キスは無しにして大人な話が
書きたかったんですが…
お酒しか大人なとこがない!(;_;)
ちなみに次元がアラスカを
作らなかったのはちょっと
やきもちをやいていたからです(笑)
Thank you for reading!!
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