ご無沙汰な心の癒し

赤と青が入り交じっている空と日も沈みかけている夕暮れ時、ルパンはリビングで明日決行する作戦を地図と合わせて見直していた。
ざっと確認を終えると自室から出て次元に地図を渡そうとしたが、その時ふと耳に笛の音が届いた。

ピタリと足を止めて、その笛の音の元を探すとそれはリビングから聞こえてくるようだった。

だがキョロキョロと見渡しても笛はない。
すると、ベランダの扉が少し開いていることに気付いた。

カラカラと戸を引いてベランダに出ると、笛の音が先ほどより大きくなる。
よいしょ、と腕を伸ばして屋根に上るとそこには横笛を奏でている五右ェ門の姿があった。

五右ェ門の隣に腰掛け、ルパンは笛の音が止まるまで黙っていた。

暫くすると五右ェ門は笛から口を離した。

「五ー右ェ門。」

「なんだ。」

「お前、よくその笛吹いてっけどそんな楽しいか?」

右足を左足の膝の上に乗せ、頬杖をついて問う。
五右ェ門は少し微笑みながら笛を膝の上に置き、ルパンを横目に見た。

「では聞くが、お主は躰が疲労を訴える際、何故睡眠を欲する?」

ありゃ、質問したのはこっちだってのに聞き返されちゃった。

ルパンは困ったように頭を掻いたが、答えなかったら怒られそうな気がしたので、仕方なく腕を組んで悩むポーズをした。

「体が休みたいからじゃねぇの?」

ルパンが不確定な答えを述べると、五右ェ門は小さく頷いた。

「左様。某も同じだ、躰がこの音を請う時が稀にある。つまり娯楽というわけだな。」

笛を手にして、沈みかけている日にかざす。
小さな穴に入った夕日の光は、出口を探して笛の中をゆらゆらとうごめいていた。
ルパンは「ふーん」と形だけの返事をすると、手を頭の後ろで組んでごろんと寝転がった。
空はもう随分黒みを増している。

「分かるようでわかんね。」

「ふふ、ではお主にもこの音を聞かせてやろう。」

五右ェ門はもう一度笛に両手を添える。
細く力強い笛の音が始まったばかりの夜のプロローグを奏でた。
耳にしたことはない曲ではあったが何処か居心地が好く、ルパンは自然と目を閉じる。

笛の音が止まると、ルパンはゆっくりと目蓋を持ち上げた。

「体が笛の音を、ねぇ…。」

「少しは理解できたか?」

「まぁ、ちっとはな。」

五右ェ門はふふ、と柔らかい笑みを見せてルパンを見下ろす。

「芸術の見る目を持つお主だ。いつかこの良さがわかるだろう。」

聞いてんのは目じゃなくて耳だけどね。

突っ込む雰囲気でも無かったので、ルパンはセリフを心中に止め、新しい言葉を五右ェ門に向けた。

「んじゃ、もっかい吹いて。」

ルパンは体を五右ェ門の方に向けて目を閉じた。
五右ェ門は微笑んだまま、笛の音を夜風になびかせる。

小さく優しい音は、しっとりと星空へ溶けていった。


-fin-

◯ほのぼのすぎるルパンと五右ェ門。
何だか平和すぎて
わけわかんないですね(-_-;)
かなりぼんやりした話ですが
1stをイメージして下さると
嬉しいです(*´∀`*)
笛を吹いているのは
1stのイメージが濃いので…

Thank you for reading!!


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