背に届いた本音

※もしかしたら次元のキャラが崩壊してるかもしれませんっ。気弱な次元が見たくない方はご注意を!※














ガチャ

アジトで五右ェ門が斬鉄剣の手入れをしていると、玄関のドアが開く音が聞こえた。
五右ェ門は手を止めずに刃を電光にかざしていたが、なかなか帰ってきた人物が姿を見せない。
斬鉄剣を鞘に戻すと、五右ェ門は立ち上がってリビングのドアを開けた。

するとドアのすぐ前に次元が立っており、少し驚いた五右ェ門は次元に声をかける。

「どうしたのだ。早く入…。」

五右ェ門がリビングに入るよう促すと、次元は帽子を外した。

そこにある次元の表情は普段のものと明らかに違っていた。

何か病でも患っているのではないかと思うほど顔色が悪く、にも関わらず当の本人は五右ェ門に小さく笑いかけた。

「悪いな。なかなか…踏み出せなくてよ。」

「……。」

五右ェ門は目を見開いて次元を見たが何も言わずに、リビングへ戻った。


「…何か飲むか?コーヒーで良いなら注いでやろう。」

五右ェ門が控えめに言うと次元は「あぁ」とだけ答えた。

コポコポとホットコーヒーが注がれる。
その間2人は何も言葉を交わさなかった。
だが五右ェ門は次元を気にかけ、チラチラと様子をうかがっていた。
次元は帽子を外したまま、ポケットに手を入れて椅子の背凭れを背中で軽く押すように座っている。俯いたまま、視線を動かさない。

五右ェ門は音の無いため息をついてコーヒーを運んだ。

「砂糖は入れておらぬ。」

次元の目の前にコーヒーを置くと、次元はやっと顔を上げた。

「さんきゅ。」

「構わん。」

空気が止まる。

次元は感謝の意を述べたがそれまでで、コーヒーをなかなか飲もうとしない。
五右ェ門は普段は飲まないコーヒーを自分の分も注いでゆっくり啜った。


「…次元…。」

五右ェ門は言葉を繋げようとしたが、内の自分がそれを喉辺りで止めた。
大まかな想像はつく。それをわざわざ確かめるために次元を傷付ける可能性のあることはやらない方がいい。

すると次元は、また心の無い笑みを浮かべて五右ェ門を見た。

「帰ってきてこんな落ちててよ、らしくねぇよな。」

「いや…。」

五右ェ門が困ったように眉を動かすと、次元は片手はポケットに入れたままコーヒーに手を伸ばした。

「お前さんは何も悪くねぇのにすまねぇ。…いや、誰も悪くねぇのかな。」

その時、五右ェ門は自分の思っていたことに確信を持ててしまった。
願わくは違っていてほしいと、内心で思っていたことにやっと気付く。

「…不二子殿か。」

「あぁ。」

わかりきっていた返事が五右ェ門の中でドスンと音を立てて落ちる。

「……。」

五右ェ門は何も言えずにコーヒーを置いた。
水面に映る自分の顔が歪み、そのまま視線をずらす。

「わかってたんだ、初めから。どうすることもできねぇけどよ。」

次元はコーヒーを持っていた手を持ち上げ、ガシガシと頭を掻いた。
オールバックにまとめられていた前髪が、パラパラと本来の位置へ下がる。
だが次元は乱れた前髪を気にも止めず、小さく息をはいた。

「何で割り切れねぇかな…。」

コーヒーの湯気が小さくなっている。

五右ェ門は固く閉ざしていた口を開いたが、言葉は出てこなかった。
慰めの言葉1つや2つが簡単に出てこない自分の知識の無さに五右ェ門は自身に嫌気が差す。

「次元…。」

「あぁ、ごめんな。ただの愚痴として聞いてくれるだけでいい…。」

「いや、」

五右ェ門は次元の言葉を制し、悩みながら次元に目を移した。

「お主は拙者と違って、その…女子の扱いも理解しておる。不二子殿は何とも言い難いが、必ずお主に魅入る者が現れるだろう。だがお主自身が不二子殿を忘れられぬと申すならばそれでも良いと思うぞ。」

「……。」

次元は驚いたように五右ェ門を見る。
五右ェ門ははっと我に還り、恥じるように頭を小さく下げた。

「……すまぬ。大口を叩いてしまった。」

「いや、んなことねぇよ。そうか…そうだよな。」

次元は目を細めてコーヒーから微かに上がる湯気を眺める。
そしてコーヒーカップを持ち上げ、ゆっくりとコーヒーを啜った。

「ありがとな五右ェ門。」

次元が先ほどとは違う笑みを見せると、五右ェ門は少し戸惑った。

「拙者は何も…。」

焦る五右ェ門を見ると次元は笑って帽子を被り直した。

「聞いてくれるだけで十分なんだよ。それに助言ももらったしな。」

五右ェ門はぱちくりと目を開いていたが、次元の目が色を取り戻したことに気付き、同じように微笑んだ。

「…では何れお主の未来を占ってやろう。」

「そりゃいい。どうでるかねー。」

はははと笑い、コーヒーを啜ると次元はわざとらしく眉を寄せた。

「コーヒー温いわ。」

「入れ直してやろうか?」

「お、優しいじゃねーか。」

「今日のみだ。」

「十分さ。」

次元がカップを差し出すと、五右ェ門は口角を上げてそれを受け取った。

次元に背を向けてコーヒーを注いでいる時、後ろから無いはずのコーヒーを啜る音が聞こえたが、五右ェ門は聞こえないフリをした。


-fin-

◯ちょっと病み気味の次と五。
次元…本当にらしくないですね(;_;)
「不二子はやっぱりアイツの女だ」と
何かをきっかけに思ってしまった
次元とそれを受け入れる五右ェ門を
書きたかったので衝動書きでした…
この2人は見えない深い絆が
あればいいと思います*

Thank you for reading!!


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