千切れぬ契り

※第112話「五右ェ門危機一髪」のその後の妄想ストーリーです。見ていない方はご注意を!※












ウルフとローズの拷問の城を出た後、ルパンたちはアジトに戻った。
相当の怪我を負わされていた五右ェ門をルパンは急いで手当てするため、有無を言わさずベッドに寝かせる。

手当ての途中、消毒によって激痛が傷口を蝕み、五右ェ門は悲痛な呻きを上げたが、すぐに奥歯でそれを噛み殺し平然を装っていた。
ルパンは五右ェ門を見ながら心を鬼にして手当てを続け、何とか全ての傷口の消毒を終えた。

ルパンはとりあえず安堵の溜め息をつき、ベッドの隣に椅子を引っ張ってきてそれに腰掛ける。
五右ェ門は苦しそうではあるものの、顔色は先ほどより随分正常に戻っていた。

「終わったぜ。何か食いたい…いや、まだ無理か。欲しいもんあるか?」

ルパンが五右ェ門を覗き込みながら聞くと、五右ェ門は瞼を持ち上げ視線をルパンに移す。

「……水…か何か、飲むものがあれば…。」

「飲みもんだな。よし、ちょっと待っとけ。」

ルパンは膝を叩いて立ち上がり、部屋を後にした。

3分後にルパンは白湯と緑茶を持って部屋に入ってきた。

「どっちがいい?」

「では…白湯をくれ。」

「りょーかい。」

ルパンは一先ずその2つをベッドの隣の台に置き、五右ェ門をゆっくり起き上がらせた。

「……っ。」

「あっ悪ぃ。痛かったか?」

「いや、平気だ。…全く、女1人にここまでやられるとは修行不足にも程がある。」

悔しそうに五右ェ門が笑うと、ルパンは何も言わずに五右ェ門をベッドに座らせた。

ゆっくり白湯を渡し、ルパンも腰掛ける。
五右ェ門は一口白湯を飲むと、無意識の溜め息を一つついた。

「五右ェ門。」

五右ェ門が「なんだ?」と振り返ると、ルパンは一時戸惑って口を開いた。

「俺が来なかったら…どうするつもりだったんだ。」

ギリギリ間に合ったからいいものの、もしあと5秒でも遅ければ五右ェ門は今ここにはいない。

すると五右ェ門は少し間を置いて口から湯飲みを離した。

「愚問だな。拙者とて人間だ、お主があの時来なければあのまま死んでいただろう。」

ルパンは思わず息を飲んだ。
「武士道とは、死ぬ事と見つけたり」という言葉を、何度も口にする男なのだから死ぬ覚悟は本当にできていたのだろう。
自分のために死ぬ覚悟が。
あと少し早ければと、ルパンは心の中で地団駄を踏みながら、五右ェ門を一瞬でも心配しなかった自分を憎んだ。

「……だが、」

「?」

五右ェ門は目を細めてルパンを見据える。

「お主は必ず来ると信じていた。それさえ裏切られなければ、拙者は身罷ろうともお主を恨むつもりはなかった。」

五右ェ門は小さく笑って湯飲みを持ち上げる。
ルパンは言葉が出てこなかった。
五右ェ門の黒髪が微かに揺れ、ルパンはハッと我に戻り口を開く。

「…もしそれでも来なかったら?」

自分でもどういう返事を期待していたか分からなかったが、気付いた時にはもう五右ェ門の返答を待っていた。

五右ェ門は一瞬目を丸くし、薄く唇を開く。

「怨念で殺していたかもしれぬな。」

ニヒルで優しい笑みを見せると、ルパンは潤んだ声で笑った。

「ははっ、そいつはシャレにならねぇ。」

ルパンは手で目を覆い、大袈裟に仰け反った。
そして手を離してゆっくり立ち上がり、五右ェ門の頭を撫でる。

「ありがとな、信じてくれて。」

ルパンは五右ェ門を優しく抱き締めると、「あっ」と声を上げた。

「斬鉄剣、リビングに置いたまんまだったわ。取ってくんな。」

ニコッと笑いかけ、ルパンは五右ェ門から離れた。

「ルパン、」

五右ェ門は控えめに名を呼ぶ。

「ん?どした?」

「助けに来たこと、感謝しておるぞ。」

五右ェ門も微笑むと、ルパンは頷いて出ていった。


「次元、斬鉄剣どこ?」

「ここだ。」

ソファーに腰掛ける次元に声をかけると、次元は斬鉄剣をルパンに差し出した。

「五右ェ門の調子はどうだ?」

「良くはなったよ。明日は安静にしとかなきゃ駄目だけどね。」

リビングを出ていくと、ルパンは斬鉄剣を鞘から少し引き抜いた。

「五右ェ門守ってくれて、感謝してるぜ。」

斬鉄剣がキラリと光るとルパンは斬鉄剣を鞘に戻した。


-fin-

◯112話はルパンと五右ェ門の絆が
すごくよくわかるお話でした。
個人的にかなり好きです(^^)
窮地に追いやられても絶対に
口を割らなかった五右ェ門も
ウルフに憤怒の形相を向けるルパンも
かっこよかったです。
ルパンが手当てしてるのは
私の妄想というか願望というか…

Thank you for reading!!


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