まずはじめに思ったのは、ボクと同じで帽子をかぶっていた、というとこだ。
その次に、髪の毛が茶色いな、とか、外はねはくせっ毛なのかな、とか。
でも、次第に彼のいろいろなことがわかった。
高いとこがすこし苦手なこと、ポケモンがすきなこと、甘いものよりからいものの方がすきなこと。
そのたび、ボクは自分の中で次第にわがままになっていた。
彼のもっといろんなことを知りたい。
誰もしらない、トウヤくんのこと。
「あの、N、」
ふとトウヤくんの声がきこえて、
「近いんだけど、」
そう言われて、自分の顔の目の前にトウヤくんの顔があることに気がついた。
トウヤくんの香りがするな、と思ったら無意識に近づいてしまったのかも。
そして少し困ったようなそんな表情も、ボクには新鮮に思えた。
トウヤくんは、ボクにいろんなものをくれる。
形のあるもの、形のないもの。
すべてが、ボクにとっては新しく感じるものだ。
「どうかした?」
「…トウヤくんは、どうしてボクみたいなのと一緒にいてくれるの?」
下を向いてきいてみると。
「Nと一緒にいたいからだよ、いろいろ心配だし。それに、俺くらいしかいないでしょ?」
ボクの両手を握ってまっすぐにみつめる。
その瞳が、ボクはすきだと思った。
今のトウヤくんの視界には、きっとボクしか写しだされていないだろうから。
「トウヤくん、君はやさしいね」
握られた手をゆっくりほどくと、トウヤくんは悲しそうな顔をした。
その純粋な瞳を汚したくない。
「でも、トウヤくんの、いろんな表情がみたいんだ」
わがままでごめんね、というと、俺はNの世話係だからいいんだよ!と冗談ぽくいって腕をとると、どうどうとした態度で道を進みはじめた。
ああ、やっぱりやさしいな、と思った。
ボクは君をひとりじめしたいと思ってるなんて、その純粋な心では見当もつかないだろうな。
気付かなくてもいい。
今のボクには、今のトウヤくんが必要なんだから。
気づかない方がいい気持ち
(ボクだって気づきたくなかった、)
2011.03.14