雨は嫌いだ。
空から舞ってくる水滴は肌に触れると冷たくて、服に触れるとたくさんの小さな模様を作る。
空気がじめじめして、心のどこかに不安と憂鬱感を感じさせる。
降ったり止んだり、自分勝手なところも気に入らなかった。



「残念やったねえ」

一番大きいであろう窓のカーテンを開けて、濡れている外の景色に目を向ける。
ザー、という大量の雨が降りしきる音に、思わず耳を塞ぐ。

「…雨は嫌いだ」
「へー?なんでー?」

カーテンを閉めながら、スペインは不思議そうに首を傾げる。
…こうやって、楽しみにしてた約束を現実にできないからだよバカ野郎。


今日は久しぶりにスペインの家に行って、町に出かけてから一緒に庭のトマトの収穫をする予定だった。
ここんとこお互い忙しくて、なかなかゆっくり二人でいる時間がなかったから。
落ち着いたら二人で会おな、てスペインから誘ってくれた約束。
…ずっと楽しみにしてたのに。


「俺は雨も結構好きやけどなあ〜」
なんて、俺の気持ちも知らずに能天気に呟いた。
雨が好きなんて、今の俺にはもっと気分を沈ませる言葉だった。

「なんでだよ、」
「えー?だってきれいやん」
「どこが」
「キラキラしとるとこ」
「はあ」

思わず気の抜けた声が出る。
それに、とまだあるようで、俺の座っていたソファの横に腰掛けた。


「こうやって、ロマと家でゆっくり過ごせるやんなあ」

そう言うと、ごろんと俺の膝に倒れこむ。
普段見上げている顔がすぐ下にあって、その瞳に見つめられて恥ずかしくなった。
思わず目を反らす。

「ロマーなんで反らすんー」
「う、うるせえ!こっちみんなハゲ!」
「やーんかわえー」
「…殺すぞてめ、」

そこまで言って顔をまた下に向けた途端、視界が黒に覆われて目を見開いた。
遅かれながら、それと同時に唇が重なってると気づいたわけで。
抵抗もできず固まっていると、ゆっくりとそれは離れて、その途端、

「このアングルええなあ」

ロマの顔いつもよりえろくみえる、と恥ずかしいことを言ってきたので、赤くなるくらい頬を思い切りつねってやった。
自分の顔が熱くて、それを紛らわすためでもあったんだけど。
相変わらず雨の打つ音はやんでいなくて、視線を一瞬窓へ向ける。



雨の日もいいかもしれない、なんて思った俺はほんとに単純な奴だな、と苦笑いをした。







あめあめふれふれ



2011.03.14
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