今年の夏は本当に猛暑日が多かったよな、というのを毎年夏の終わりに言っている気がする。なんて適当なんだ。一年前のことなんて、結局覚えていないんだろう。この夏最高気温になったかと思えば急に肌寒くなり、気紛れすぎる天気に苛つきを覚える。

「先輩は、夏と秋どっちが好きですか」
「ん?夏と冬じゃあないんか」
「はい」

下らない質問をすると、コンビニで買ったばかりの肉まんを頬張りながらんんー、と考え始める。夏と冬なんて気温も天気も違いすぎる、この二つは別に秤にかけるものじゃないだろう。まあ、夏と秋もかけるものでもないと思うが。しばらく唸るように声をあげて悩んだあと、夏やなあ、と言った。

「へえ、何でですか」
「秋言うたらもう結構寒いやろ。俺寒いの苦手やねん」
「ああ」

そういわれて、そういやそうだったか、と中学の頃を思い出した。まだ少し肌寒くなってきたな、という時期にはもうすでに毛糸のマフラーをぐるぐるに巻き上げていたような気がする。あれはなかなか滑稽な姿だ、と思いながら隣を歩いていたものだ。するとお前はどうなんや、と言われた。ていうか、お前呼ばわりすんじゃねーよ。

「・・・別に、どっちも好きじゃないですよ。普通」
「なんやそれ。・・・・ま、ええけどな。にしても肉まんうまいなあ」
「ふは、妖怪さんが肉まん食べて味分かるんですね」
「前から思っとったけどその妖怪ってなんやねん」
「そのまんまですよ」
「はっ、自分は悪童やろ」
「悪童の方がまだ人ですから」

ひどいやつやなあ、とまた一口。この人の方がよっほどひどいやつだと思うのは間違いだろうか。
一口食べるたびうまいなあ、と呟いている気がする。
冷たい風が全身を包むと、やっぱり俺は秋の方が好きだと思う。このムカつく嫌な先輩の真っ赤な鼻と真っ白な息を独り占めできるのならこれくらいの寒さがちょうどいいだろう、と。我ながら気色悪いことをぼんやりと考えた。






俺だけの秋/好きな季節

121017


2012.10.23
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