土井先生に夜更かしはするなよ、とよく言われていた。そういえばいつだったか、一年は組のみんなと部屋に集まっておもしろい話をして夜更かしをしたことがあった。あの日は結局みんな布団を持ってきて、昼までみんなで寝ていたんだっけ。そんなことを思いだしながら布団を敷いていると、扉を少し開けて外を覗いていた伊助が庄左ヱ門、庄左ヱ門、と急かすように呼んだ。

「どうしたの伊助、もう寝るよ?」
「待って、ちょっとだけ。こっちこっち」

首を傾げると待ちきれんとばかりに僕の腕をとって扉を開ける。少し冷たい風が肌にあたって鳥肌がたった気がした。


「わあ、」


外を見上げると、数えきれないほどの小さな星たちが真っ暗な夜空を照らしていた。ピカピカと瞬いている星もあれば、ずっと光を放し続けている星もある。そうか、そういえば今日は七夕だった、と独り言のように言うとなにそれ?と伊助が興味津々な様子で乗り出してきた。

「うーん、簡単にいうと、星に願い事をお願いする日だよ」
「へえ、願い事かあ・・・。よし、庄左ヱ門、一緒にお願いしよう」
「あ、そうだね」

そう言って目を閉じてお願い事のポーズをする伊助を横目でみて、僕も同じことをする。
僕の願い事は。そう考えたとき、冷静とよく言われる僕も人間であって欲がたくさんあるものだ。それでもその中で、一番に叶えたいものは、・・・・。


「庄左ヱ門は何お願いしたの?」
「・・・こういうことは、人に言わないほうがいいと思うんだけど・・・」
「まあいいじゃない」

軽く言う伊助に、まあそうだよね、と思う。少しためらいながら僕の願い事は、と声に出していうと、心がほっこりと温かくなった。伊助は?と訊くと、少し黙ってから少し間を開けて、僕も、とにかっと笑った。その笑顔をみて、僕もおもわず微笑む。伊助の笑顔は、いつも僕を支えてくれる。




「あーっ、庄左ヱ門と伊助だ」

後ろのほうから声がして振りかえると、乱太郎きり丸しんべヱのいつもの三人が顔を覗かせていた。しーっ!とするとあ、ごめんごめんと駆け寄ってくる。

「乱太郎たちもまだ起きてたの?」
「うん。少し外に出ようと思ったら星がきれいだったから」

すると長屋に並ぶ扉が次々に開くと同時に、ひょこ、と顔が覗く。みんなも起きてたの?と訊くと、庄左ヱ門たちの声が聞こえたから、とにやにやして言った。結局みんな起きてたということか。まあ、少なくとも勉強をしていたということどはなさそうだ。

「今日は七夕なんだって!」
「たなばた?」
「あー、知ってる!願い事をする日なんだよ」
「じゃあ、みんなでお願いしようよ」


庄左ヱ門、と呼ばれて顔をあげると、合図おねがーい!と大好きなクラスメイトたちの大好きな笑顔がみえた。まったく仕方ないなあ、とみんなの中心に腰を下ろす。


「せーーえのっ」


たくさん瞬く星たちに、一斉に声を届ける。この時間もまた、いつかの夜に思い出すのかと思うと胸があたたかくなった。

















小さな小さな夢の星
(みんなとずーーっと、一緒にいられますように!)







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2012.07.29
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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