「おい、チビ」
「…なんスか内申書沢さん」
「長くね?」

じゃあその呼び方もやめてください、というとはいはい、とまったく子供だねえとでも言い出しそうな表情をしていた。ムカつくけどきりがなくなりそうだから知らないふりをする。ほら、こういうとこ大人だろ?なんて、一瞬でも思う自分に毎回呆れる。


「で、なんスか」
「なんか飲み物買ってこい」
「はああ?」
「早く、飲み物」

何を言われるかと思ったら、なんて堂々としたパシりなんだろう。後輩をパシリにするなんてそれ先輩としてどうなんスか、と言うといやそうじゃねーよ、と言った。そうじゃなかったらどうなんだよ。すると下を向いてぼそぼそと何かを言ったようだった。

「え?い、今なんて言いました?」
「だから、ウチ来いって、今日親いないんだよ。冷蔵庫飲み物ないから自販で買えってことだよ分かれバカ」
「は、はあぁ!?」

なんて無茶苦茶な人なんだ?そうやってまた俺をからかってるんだろ、と思ったけど、そうじゃないということは分かっている。なんて分かりにくい。そんなの、言ってもらわないと分かるわけないだろ!でも、この人は俺に似て不器用だかなあ。足音が聞こえてはっとして横を見るとさっきまでいたはずの南沢さんがいなくて、スタスタと歩き出していた。待ってくださいよーと小走りで追いかけた先には、小さく自動販売機が見えた。




「南沢さん何にします?」
「コーヒー」
「うっわ、いつもと一緒じゃないスか。いっそのこと酒飲みましょ酒」
「アホか。そんなのバレたら内申書に響くだろうが」

真面目すぎて笑えてくる。いや気にするとこそこじゃねーだろ、とつっこむと、まああと何年かしたらこの分の借りくらい返してやるよ、と余裕な笑みで言った。結局これは俺の奢りかよ。
数年後の酒が飲める歳の頃まで、この人は俺といてくれるのだろうか。なんて、先のことを考えるのは疲れる。この人の隣にいるのが当たり前になっている俺は、この場所から離れるということが考えられない、というかあまり考えたくないだけ。
でも一年のあいつがよく言ってる、なんとかなるさ、ていうやつ。まあ、なんとかなるか。心の中で呟くとなぜか、不思議と気持ちが少し軽くなる。その軽い足取りで、この想い人の隣を歩いた。











隣同士がいちばん自然
これから先も、きっと

2012.02.23
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