これの続き
霧野は出てこない霧野←狩屋



おはよう、と声を掛ければおお狩屋おはよう、と当たり前のように返ってくる。初めは慣れなかったそのクラスメイトの声にも随分慣れたものだ。自分の席に座り鞄を机の上に置くと、ファスナーの間から水色のサッカーボールが揺れた。
他に携帯に付けられるようなものはなく、結局霧野先輩に貰ったこれを付けている。なんとなく腑に落ちない。おまけにお揃いだなんて増して腑に落ちない。落ちなさすぎる。まあただ買っただけで向こうは付けてないだろ、と思ったけど、練習が終わったときに、先輩の携帯にしっかりと付けられているピンク色のサッカーボールを見てしまった。いや、なんで付けてるんすか、と訊いたら、何のために買ったんだよ、と真顔で言い、俺の携帯からぶら下がるそれを見てお揃いだな、なんてへらっと笑った。なんだよ!なんだよその笑顔!あの人たぶん頭おかしい。あの人たぶん俺のこと好きだ。なんてことを自分で考えて恥ずかしく思う。自意識過剰だ。ただ、そうだったらいいのにな、なんてつい考えてしまって、毎晩頭を抱えている。なんでそんなことを思うのか、俺も頭がおかしいのだろうか。



「あーっ、狩屋!」


途端に天馬くんに教室中に響くような大声で呼ばれて思わず顔を赤くした。多分赤くなってる。声大きい!としーっのジェスチャーをするとはっとして、ごめんごめん、と信助くんと席に向かって来る。

「狩屋も携帯買ったんだ!番号交換しよ〜」
「いいけど、これどうやってやるの?いまいち使い方分かんないんだよね」
「やってあげるよ。貸して貸して」

狩屋ってもしかして機械音痴?と言いながら手早く携帯を操作する天馬くん。なんとなく意外だ。と思ったけど、どうやら剣城くんに一から教えてもらってできるようになったらしい。信助くんに狩屋が機械音痴ってなんかおもしろいね、と言われてちょっとむっとした。
登録しておいたよ〜と笑顔で携帯を差し出す天馬くんに、同じく笑顔でありがとう、と受けとる。するとそのぶら下がるサッカーボールに気づいたようで、信助くんと共に目を輝かせた。

「このサッカーボールいいなあ〜!どこで買ったの?」
「ああ、駅前だよ。きり」

霧野先輩に貰ったんだ、お揃いで。なんて、言えるはずもない。はっとして口を閉じる。

「…きり?」
「あ、いや。貰い物なんだ」
「そうなんだあー、残念」

そこでマネージャーでありクラスメイトの空野がいきなり現れおはよう、と挨拶した。と思ったら教室のドアが開き、担任の先生が座れーと呼び掛ける。じゃあまたあとでね、と言ってそれぞれ席に戻っていった。

冷静になって考えると、別に言ってもよかったんじゃないのか。逆になんで隠す必要があるのだろう。
鞄にしまおうと思いぱっとそのサッカーボールを見ると、あのときの霧野先輩の笑顔が浮かんで、ぶんぶんと顔を横に振った。



(もしかしたら、好きになっているのかもしれない)










認めたくない事実
文まとまらないね…

2012.02.09
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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