「半田〜」


今日はいつもより低気温だと、ニュースで言っていた。
念入りに、去年の冬に無理やり棚に押し込んだマフラーを取り出し、上着もしっかり着る。
つもりでいた。

つもりでいた、ということはもちろんそのままの意味で、全てを忘れてきた。
よりによってこんな寒い日に…。


「ああ、マックス」

今日は珍しくサッカー部が休みらしく、散歩がてら本屋にでも行こうとしていた。
そこにやってきたのはマックスだった。

「上着なしで寒くないのかあ?」
「寒いに決まってるだろ!好きで上着きてないんじゃないよ」
「そーなの?」

あまり興味がなさそうだが、間ができるのが嫌だと思い簡単に説明した。

「半田って変に抜けてるよね」
「んな、うるせえよ!」

第一声がそれかよ。
しかし、寒いという気持ちはまったくもって消えてはくれない。
隣で笑っているマックスは、寒さ対策万全!と言いたくなるくらいだった。
いつも被っている帽子も、今はすごく羨ましく思える。
寒い。本屋まであと少し。


「よし、半田手かして」
「は?はい、」

話しだしたと思ったら手をかせ?
意味が分からなかったが、とりあえず手を差し出した。
かと思うと、差し出した手をいきなり握られた。

「?なにしてんだよ」
「半田寒いから、手握ってあげようと思って」

繋いでる手に、違和感を感じた。
普段からそんなに手に触れることもないし、しいて言うなら部活でハイタッチをするときくらいだ。

「なんでお前と手繋がないといけないんだよ」
「あれ、どきっとしない?」
「は、はあ?」

「半田とずっと手繋ぎたかったのに、その反応かあ」


マックスと背は同じくらいなのに、手はなんとなく大きく感じた。
手の熱が伝わってきて、なんとなく胸も熱くなる。
こいつがいつも言わないことを言ったからか?
冷たい風が、横を通り抜ける。



「…何言ってんの」
「あれ、伝わんない?俺の気持ち」
「だから何が」
「僕が半田のこと好きってこと!」

どうやら俺は耳が悪いらしい。マックスが俺を好きだと聞こえた。
つい聞きなおしても、さっきと同じ返事が返ってくる。
でもあれだろ、好きという感情は、いろいろある。
友達として好き、という意味でとらえるべきだと思ったが、俺はどうももう一方の方の意味でとらえてしまった。
いや、ないだろそれは。と思ったのもつかの間だった。



「あ、友達としてじゃないからね?」


ああ、そうなんですか。
そのまんまの意味なんですか。思考がおかしい。こいつ絶対今おかしくなっているんだ。寒さにやられてる。
頭の中でぐるぐると考えていると、急に繋いだままの手を引っ張られ、勢いよく走りだした。

「ちょっ、マックス?」
「サッカーするぞ!」
「サッカあ?」

いきなり何かと思うと、そんなことを言いだした。
走る足は止まらない。


「俺、これから本屋に行こうと…」
「いいから!」

こうなると、俺にはどうしようもなくなる。
まあいいか。
さっきまでの会話はすっかり忘れさられていて、安心した。


繋いだままの手から伝わる熱で、とても心臓がどきどきしていた。
なんでかは分からないけど、そうとしか説明できなかったから仕方がない。
マックスの顔を見るととても達成感にみちた笑顔で、少しむかついた。
よく考えると、本屋にも行けなかったし。
でもさっきまでの寒さがすっかり消えてたから、今回はおおめに見てやろう。







寒い日の思考は予測不能
(返事はあとで聞くから)
(え、覚えてたんだ…)

2012.01.07
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