「今年もいろいろあったなあ〜」


年末番組を観ながら椅子の背もたれに体を預けると、一気に力が抜けた。

「音也、行儀が悪いですよ。だらけるなら先に早く食べてしまいなさい」
「は〜い」

トキヤ手作りの年越しそばを食べれるなんて、思ってもみなかった。それはいつもの料理と同じくもちろん美味しい。
年末ということは、今はもちろん学園も冬休み中なわけで、年末から正月あたりまで実家に帰る生徒が多い。翔と那月は実家から連絡があったらしく、少しの間帰るらしい。マサとレンは帰るといろいろと面倒だと言っていたが、使いの人?が来て結局実家に帰ったらしい。マサは、レンと顔を会わせずにすむと思ったけど、年越しパーティーでどうせ会うことになるだろうからどのみち同じことだ、とため息をついていたけど。
そんなマサも含めて、みんな、どこか楽しそうな表情をしていた。お土産買ってくるからな、と翔の言葉に頷いて、笑顔でみんなを見送った。多分。俺は、ちゃんと笑えていただろうか。少なからず、帰る家があるみんなが羨ましい。



「トキヤ」
「何ですか」
「ありがとう」


そばをすすりながら、何気なく言った。
トキヤは年末なのにも関わらず、今もこうして学園の寮に居る。きっとみんなと同じく、実家からの連絡もきっとあっただろうに。それでも、トキヤは俺の隣に居てくれている。そのことがとても嬉しい。

「…貴方にお礼をされるようなことをした覚えはありませんよ。洗ってしまうので早く食べてください」

そう言いながら、食べ終えたらしいお碗を手にして立ち上がる。ありがとう、トキヤ。何度もそう心で呟きながら、そばをすすり食べた。




『……、2、1!あけましておめでとうございまーす!!2012年ですよー!』


テレビで今人気の芸能人たちの声が部屋に響き渡る。
ソファに座っていたトキヤの隣に腰を下ろした。

「トキヤ、あけましておめでとう!」
「…あけましておめでとうございます」
「へへ、なんか変な感じ」
「そうですね」

毎年思うことは、12時になり新しい年になっても年が変わった、という実感がわかない。それは不思議な感覚で、切ないような、明るいような。トキヤも今、俺と同じでそう感じているだろうか。そうだったら嬉しい。他のみんなも、今どう過ごしているだろうか。

トキヤ、と呼んで、無造作に置かれていた手を軽く握った。するとゆっくりとこちらを向く。

「今年も、よろしくお願いしますっ」

改まって真っ直ぐ見つめながら言うと、トキヤは此方こそ、と少しだけ微笑んだ。今年一年、みんなとはもちろん、ずっとトキヤと一緒に過ごせたらいいな、と思いながら強く手を握った。








新しい年の始まりに
(その微笑む顔にキスをした)

2012.01.07
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