「ねえねえトキヤー!ポッキーゲームしようよ!」



ポッキーの箱を手にして言うと、またバカなことを、とでも言うように下げずんだ目線を向けてきた。


「今何時だと思ってるんです。こんな時間に菓子類を食べるなんてありえません」
「まだ9時だよ〜。それにこれ少し食べたからって体重なんて変わらないよ!」
「そ、そういう問題ではありません!」


(そういう問題のくせに…。)
そう言って、教科書やら机に広げていたものを鞄に詰めはじめた。
もしや、もう寝るつもりなんじゃないだろうか。
なんだよもう、つれないなあ。
こうなると、意地でもやってほしくなるのが俺の悪いところかもしれない。
トキヤの嫌がることはしたくないけど、その顔を赤くして嫌がる顔も見たいのだ。



「トーキヤっ」


しつこいですよ、と言いながら振り向くトキヤの口にポッキーを一本差し込んだ。
驚いた拍子に離させないよう、すぐにもう片方の先端をくわえる。
その途端目を大きく見開いた。
喋れない分、ニコッと笑って合図をする。
一口ずつぱくりぱくり、とすると、その度にトキヤが肩をびくりと揺らした。
でも抵抗しないんだ、なんか意外。
そして中間に差し掛かったくらいで、ハッとしたようにトキヤがポッキーをバキッと勢いよく食い折った。
食い折られた口内では折れたポッキーが歯茎に見事に突き刺さり悲鳴を上げる。



「ったあ…!トキヤ痛いよお…」
「あ、あなたが、馬鹿なことをするからですよ!」
「だってポッキーゲームしたかったんだもん…」
「何がポッキーゲームですか!下らない」

うう…怒らせてしまった。
確かにトキヤからみればただのくだらない行為かもしれないが、俺からみると一度はやってみたいことなのだ。
まあ、今年がだめでも来年もあるけど。


「第一、ポッキーをお互いに食べて結局最終的にはキスをするわけでしょう。菓子を食べるなら食べてキスををするならすると分ければいいものを…。なぜ一緒にする必要があるのですか。理解できませんね」

大真面目な顔で言うもんだから、思わず吹き出しそうになった。
なんだそりゃ!


「つまりトキヤは、ポッキーを食べてる時間が焦れったいからキスするなら早くしたいってこと?」
「は!?そ、そんなこと誰が言ったんです誰が!!」
「いやだからトキヤが…」
「そんなこと言ってないでしょう!」



なんて都合のいい解釈なんだろうかと思いながらも、つい口に出してしまった。
顔を赤くして否定するトキヤのかわいさが異常すぎて俺はもうどうすればいいのですか神様。


「今更遅いよ!」


そう言って、言い返される間を作らずすぐにキスをした。
最初は抵抗気味だったものの、徐々に体を預けてくる。
突き飛ばさないってことは、結局キスしたかったってことじゃん。


「トキヤかーわいい」
「……黙ってください」


テーブルの上で少し散らばったポッキーをちらっと見ると、甘そうなチョコが溶けかけている。うわあ、もったいないかも。

しかし目の前のトキヤの方がやっぱり甘い、と、その体を押し倒したのだった。










甘いキスを頂戴
(ポッキーゲーム不成立!)
(でも幸せだから問題ない!)

2011.11.26
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