「なあ、ポッキーゲームって知ってるか?」


本を読む聖川に呼び掛けると、興味津々のようで手にしていたそれを机に置いた。
こいつのことだ、もちろん知ってるはずもない。


「なんだそれは?」
「…やっぱりな。まあ、これは知ってるだろ?」

そう言っておチビちゃんに貰ったポッキーの箱を見せる。

「ああ、お馴染みの菓子ポッキーだな。で、そのゲームはどうやるんだ?」
「知りたい?」
「知りたいから訊いているんだ」
「…じゃ、実践で教えてやるよ。まずこれを一本くわえると」


そうして聖川の口にくわえさせると、なんとも期待の目を向けてくる。
なんとなく自分に下心があるような気がして、その目が眩しく感じた。
いやまあ、下心はアリアリなんだけど。
そのままもう片方の端をくわえようとすると何をするか悟ったのか、バッと避けられてしまった。


「な、何をする気だ!」
「何って…。こうするのがポッキーゲームなんだけど」
「な、今のが…だと?」
「ああ。イッキ達に訊いてもみんなこれのこと言うよ。二人がポッキーの端と端から食べて最終的にちゅーだよ。嫌ならやめていいんだぞ?」


なんて言ってみる。
あまりにもってくらい嫌がったら、さすがに無理強いはしないつもりだったのだが。

「…いやまて!一度くらいは体験したい。神宮寺、」

手伝え、とでも言うように目をキリッと向ける。
こいつは驚いた。ここまでしたら、絶対拒否すると思ってたのに。


「そういえばお前、チョコは苦手なんじゃなかったのか?」
「まあね。だから俺はこっち」
「……チョコが付いてない方か。仕方ないな」


そう言って向き直ると、ポッキーを一本くわえる。
その表情はなんとなくキス待ちを連想させ、すこし動揺しつつチョコのついていない端をくわえる。
改めてこうすると、なんとも微妙な距離感なんだろうか…。
近いようで遠い唇に一刻も早く食いつきたいと思う。
が、チョコの部分は全て聖川に託さなければ、俺自身がチョコを口にしないといけなくなる。それはなるべく避けたい。

数センチずつ近づいてくる聖川の顔はほんのり赤く、しかしそれよりもこのポッキーゲームを楽しんでいるようだった。
まったく、ほんとに子供みたいなやつだな。
ずんずんと迫って来て、くわえたポッキーが全て聖川の口に含まれ、軽く唇が触れた。


「うっ……。チョコの味がする」
「フ、ざまあないな。自分からふっかけたんだろう」
「そうだけど」

してやったり、というような顔をして。
ムカつくが愛しいとも思う俺はもう駄目なのかもしれない。


「…聖川、口直し」
「またチョコの味がするぞ。口直しの意味はないと思うが」
「いいからいいから」


そう言って目をつぶりいかにもなキス待ちをすると、はあ、とため息をついてから唇が重なる。

ほんのりと残るチョコの味に、また少し顔を苦くした。









苦いキスを頂戴

(ポッキーゲーム成立!)

2011.11.26
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