同室の一ノ瀬トキヤの趣味は読書で、何かと真面目な奴だ。
成績も優秀、顔も良し、スタイルも良し、歌も良し。
そんなトキヤはライバルであり、友達でもある。
いや、少なくとも、俺は友達以上の感情があるのかもしれない。
と気付いたのは最近のことだった。
机に座って本を読むトキヤを後ろから見ていると、ああ、かわいいなあ、と不意に思ってしまったのだ。
同性にかわいいと思うなんておかしいと思うのだが、そう思ってしまったので仕方がない。
翔みたいに、小さいかわいいキャラ的なのは別として(いや、でも翔はやるときはやるし、いつも男前でかっこいいと俺は思っている)。
そして次に、ああ、キスしたいなあ、なんて、思ってしまったのだ。
思いついた途端すぐに行動するのは俺の悪いところでもある。
本を読むトキヤを無理矢理こちらを向かしてキスをした。
一度触れた唇はなかなか離れたがらず、かなりの長い時間だったと思う。
時々息を吸って吐いて、そのトキヤの息遣いがどうしてもいやらしくて。

「っ、はあっ……音也、…」

なんて俺の名前を呼んだりなんかしちゃうから、俺の頭も体ももう熱くて仕方がなかった。
トキヤにもっと触れたいと、体が疼いた。







「…でね、そのときマサがさあ」


そして今現在、学校であったことを喜怒哀楽で話していた。
これは毎日の日課で、その内容をトキヤが聞いているかどうかはあまり関係ない。
まあトキヤは優しいから、聞いていないフリなんてしててもしっかり聞いててくれるんだけどね。


あの日から、俺はトキヤに触れていない。
あの時、トキヤにもっと触れたいと思い無意識にトキヤのズボンに手を掛けた途端、正気に戻ったかのようにいきなり体を剥がされ、パチン、と頬を叩かれてしまったのだ。
その後は自分のしたことにハッとして全力で謝ったのだけど。

でも、あの日気付いた。
俺がトキヤを好きだということ、足して、トキヤも俺を好きだということ。
気付いてしまったのだ。
全力で謝る最中も、そのあとも、トキヤはずっと顔が赤かった。
それ以前に、キスされてすぐに突き放さなかったことが第一だろう。
両思いと分かって浮かれるのも悪くはないが、俺は少し遊んでやろうかな、ととんでもないことを思った。

あの日俺が触れたことによって、トキヤは俺の熱を忘れられなくなっているはず。
なら、自分から行くのではなく、トキヤから動くのを待つのも悪くない。
そのために数日間、俺は触れたくてたまらない気持ちを抑えつけていた。
こっちが焦らしているのに、逆に焦らされている気分だ。
……俺も我慢の限界だったから、そろそろトキヤも行動に出てくれないだろうか、と勝手なことを思った。



すると、トキヤが椅子を少しだけ動かし振り向く。
かと思うと、ばっと椅子から腰を上げてキスをしてきた。
俺の心を読んだのだろうか、なんて馬鹿な考えは置いといて。
ああ、やっと触れた。
今まで溜まっていた欲求が浄化していく気分。


「…遅いよ、トキヤ」
「…た、試してたんですか」
「ひどい言い方だなあ。俺だって触りたくてたまらなかったのに!とんだ焦らしプレイだよ」

そう言って、今度は俺からキスをする。
さっきよりも深い深い。


「っ…音也……もっとしてください、」
「…!……び、ビンタした奴がよく言うよ…!」
「あ、あれは…!」

情景反射です、と目をそらした。
結構痛かったのに反射的につい、で済まされるのはちょっと納得いかない。

「ひっどいなあ。あれ、結構痛かったんだよ?」
「あ、貴方が…!いきなりあんなことするからですよっ」
「未遂だったじゃん〜」
「私が止めたからでしょう!」


ほんとは物足りなかったんじゃないの?と冗談混じり、で言ったつもりだった。
当のトキヤはそれが図星で何も言えないかのように視線を反らして黙り込んでしまった。
…やばいな、かわいすぎる。


「音也、音也」

もっと、とねだるように唇を重ねてくる。
俺もだいぶ溜まっていたけど、それはトキヤも同じのようだった。
こんな風に俺の名前を呼ぶトキヤの声が好きだ、と改めて思った。

というか、もっと意地悪するつもりだったのにな、と少し残念にも思ったりして。
これはトキヤには秘密にしておこう、またビンタされたら嫌だしね。
そう思いキスをして、俺も何度も名前を呼んだ。








愛しくて触れたくて
(次はもっと焦らしちゃおうかな、なんてね)




2011.10.31
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