「ああもう!」
今日はなにもかも上手くいかない、と八つ当たりで机を叩いた。
なにもかもって?
まず、朝からいきなり自転車に乗った奴とぶつかりそうになるし、いきなり廊下でうるさい先生に注意されるし、寝ないででかした宿題は忘れてくるし、そんでもってこういうときに限って授業で当てられるし、財布を忘れて昼はパンひとつだし(円堂たちからちょっとおかずもらったけど)、なにかと散々なことばかりだ。
これもみんな、半田が風邪をこじらせて学校を休んだからであって。
「お邪魔しまーす」
放課後、半田の家にお見舞いに来た。
もう何度も来てなれてるけど、一応あいさつしてドアを開ける。
音沙汰がないから、多分今は半田しかいないんだろう。
自分の家のようにずかずかと階段をのぼって、寝ているだろう真一くんの部屋のドアを軽くノックして開ける。
「はんだー?」
変わらない声のトーンで呼び掛けると、いつもより弱々しい声が聞こえた。
「…んぁ、マックス…?」
「ああ、いいよ寝てな」
先週来たときより、全体的に少しきれいになっていた。
さては僕が汚いって言ったの気にしたな。相変わらずかわいい奴。
「やあやあ、風邪引いてるねえ!」
「冷やかしにきたのか…」
失礼だなあ、一応お見舞いに来たつもりなのに。
冷やかすのは、僕の多くの特技の中にもカウントされている。
しかし、半田のパジャマ姿を見るのはもしや初めてかもしれない。
頬が赤く染まっていて、息もいつもより少し荒い。
普段はみれない半田を見て不純だけどついどきっとしてしまう。
…まったく僕という奴は。
小さくため息をつくと、鞄から先生に頼まれたプリントのかたまりを出す。
「はーい、これプリントね」
「あ、ああ…サンキュ」
「明日にはこれそうなの?」
「まあ多分…熱の下がり次第だけど」
「今日はねえ、ほんと最悪な一日だったよ」
「なんだその話」
「とにかく散々だったの!誰のせいか分かってる?」
「え?人なの?」
首を傾げるそのかわいらしい顔に指をさして、真一くん、君だよ、と言うと半田は「えぇっ?」とさらに驚いて困ったような顔をした。
「半田がいないとね、俺の毎日は意味がないの。わかる?つまんないの!」
「つ、つまんないって…」
「…だから、早く治してよね」
小さく言うと、半田は苦笑いをしてはいはい、と言った。
ああ…その顔かわいすぎだろ…。
流れにまかせてキスしてもいい?と訊いてみると、風邪うつるぞ!と焦ったように言った。
「半田の風邪だったら平気だよ」
「…なんだそりゃ」
まあどうせ拒否はしないんだから、と軽く触れるキスをして、ちゃんと治してね!と言って部屋を出た。
次の日、風邪を治して学校に来た半田は、マスク姿の僕をみてほらみろ、とにやっと笑ってみせた。
…まあいいよ、今日からまたいつも通りの毎日なんだから。
毎日君中心
(半田〜キスして)
(また風邪移す気か)
2011.03.14