日差しの暑い日が続く中、俺はヒウンアイスを食べたいがために、Nを連れてヒウンシティに向かっていた。
しかしヒウンアイスはいいものの、ヒウンシティはイッシュ地方でも特に建物が多く、大都市だ。
もちろん人も多い。
その分空気も、他の町より倍はむしむしとしているわけで。



「Nの髪暑苦しいよ!」

耐えきれず一歩前を歩く長身の男に訴えるように言うと、Nは、えっそう?と自分のことなのに、さも気にもしていなかったように話す。

「みてるだけでも暑くなってくるよ」
「そうかなあ?まあ確かにちょっと暑いけど…」
「でしょ?」

というか、そんなに長い髪をぶら下げていて暑いわけがない。
俺のこの髪でも暑いっていうのに…。
髪、切ったりしないの?と訊いてみると、えっ…髪を…?と、ものすごく真剣な顔になった。
思ったことをつい言ってしまったけど、もしや禁句だったか。

「と、トウヤが切れって言うんなら……切っても…いいんだけど……、」

そう言っているNの顔はわずかに歪んでいて、ああ、切りたくないんだな…とすぐに分かった。
確かに昔からずっと長かったようだし、髪の短い自分なんて想像できないのかもしれない。
それに、俺だって長髪じゃないNを見る勇気はあまりない…。
いや、短髪は短髪で全く問題はないのだけど。
まあ、言ったのは自分なんだけど。


「N、無理しなくてもいいんだよ…てか、俺別にNに髪切ってなんていわないから」
「トウヤ……。そ、そう…?」
「うん、だって」

その長い髪も含めてのNが好きだから。
と、思わずそこまで口に出してしまいそうだった。
あ、危ない危ない…。何を恥ずかしいことを意図も簡単に言おうとしているんだ。

「え?だって、何?」
「いやなんでも!」

Nは不思議と思っている顔をしたままだったけど、俺は構わずまた歩き出した。
太陽の光が上から直に当たって、熱にやられたせいだろうか。
思ったことをそのまま言ってしまうように思って、意識をしっかりさせるために頬を叩いた。
それでも、照りつける太陽には叶わないような気がした。




都会の熱に負ける
(素直に言ってしまうところだった、)



2011.07.20
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