「半田ー、それなに?」


机の上に広げていた先程購買で買ったお菓子に、前に座っている松野が目を向ける。


「新発売のチョコ。食う?」
「食べてほしいならもらってあげる」
「じゃあやんない」
「あーうそうそ!ちょうだいよー」

ほんとは欲しかったらしく折れたから、しょうがなくわけてやった。

HRが終わって今日は部活が休みだから帰ろうと思っていたら、松野に部室寄っていかない?と言われた。
まあ帰っても特にやりたいこともないし、んじゃあ購買寄ってから、と承諾すると松野は嬉しそうに笑った。




「半田、まだ帰んなくていいの?」

ふと松野が切り出した。
携帯のディスプレイ画面を見ると下校時間はとっくに過ぎていて、離れた校舎からチャイムの音が小さく聞こえる。


「松野こそまだ帰んないのか?」
「…半田が帰るときに帰る」
「俺もそのつもりなんだけど…」
「え、」

松野はなぜか驚いたようだった。
俺変なこと言ったか?


「…なんで俺が帰るなら半田も帰るの?」

なにやら分かりにくい質問をしてきたので、一瞬首をひねった。
(え、だって、)

「一緒に帰るんじゃねーの…?」



言ってから、はっとした。
何いつもの松野みたいなこと言ってるんだ俺は。
うわ、なんか恥ずかしい。
普段こんな軽いことすら口に出さないから、余計恥ずかしさが増してくる。
てっきり、一緒に帰るのかと…。余計なこと言った。



「うわ、ごめんはんだ」
「は?」

赤みがまだ消えてない顔を上げると、さっきまでひょうひょうとしていた松野も顔を真っ赤にしていた。


「今、すっごいキスしたくなっちゃった」


今にもあちゃー、と言いそうな真っ赤な顔を手で覆った。
恥ずかしい奴。なんでそんなこと言えるんだ。
そんなことを言われて、しかも言った本人も顔真っ赤で。
見てるこっちまで顔が熱くなって、さらに赤くなってるのが分かる気がする。



「…してもいい?」
「…きくなよ、馬鹿」


ふふ、と笑って半田かわいい、と言ってきたからうるせー、って頭を軽く叩いた。
視線が合って、二人で笑って唇を重ねる。


ああ、愛しい。
一緒にいるだけで、キスするだけで、こんなに幸せな気持ちになれるなんて。







君を、想う
(ただひたすら、君が愛しい)


2011.03.14
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