今年の初雪は、いつもより遅かった気がする。
雪が降るとなぜか喜んだりはしゃいだりする奴がいるけど、そんな奴らの気がしれない、といつも思う。
雪が降る窓の外を見て、ため息をついた。



「な、シルバーは?」


顔を上げるとゴールドが俺の机の前に肘をついていて、その隣にはすっかり帰る支度ができているクリスも居た。


「今日レッド先輩たちとクリスマスパーティーやるんだけどよ、シルバーも来んだろ?」

一瞬考えた。
そうか、今日はクリスマスイヴなのか。
それと同時に俺の誕生日だということは、こいつは知らないだろう。
まあ、知らなくていいのだが。
なんとなく華やかなことをしたい気分ではなかったから、はっきりとした理由は言わずに、俺は行かないとはっきりと断った。
もちろんそんなのでゴールドは納得しなかったが、無理矢理連れてもしょうがないでしょ、とクリスに手を引かれて行った。
クリスは空気を読める奴で本当に助かる。




12時頃になると、校内に残っている生徒はほとんど居なかった。
そろそろ帰ろうと思い、椅子から腰を上げる。
自分の誕生日をこんな風に過ごすなんて、寂しいと思われるのだろうか。
しかし今までもずっとそうだったし、むしろこれがいいのだ。
他人に祝われてもどう反応すればいいか分からないし、第一祝ってもらいたいとも思わない。



「シールバー」


後ろのドアの方から聞き覚えのある声に名前を呼ばれ振り返ると、だいぶ前に大人数で帰ったはずのゴールドが居た。


「お前…帰ったんじゃなかったのか」
「おめーを置いて帰るわけねーだろ!」

そう言いながらずかずかと教室に入って来て、俺の腕を掴むと来た方向へ戻るように走りだした。


「ちょ、どこに…」
「屋上!」
「は、はあ?」

こんな寒い中屋上なんて御免だ、と訴えたがゴールドには聞こえなかったらしく、走る足は止まらなかった。

一番上の階段を登った所にあった扉をばん、と勢いよく開けると、それと同時にすごい勢いで冷たい風が全身に吹いてくる。


「うーっさみー」

お前が連れて来たんだろうが、と心の中で呟く。
それにしても本当に寒い。
そりゃあ、セーター一枚で雪が降る外に出れば寒いのは当たり前なのだが。
それも含めて、自分は他人より寒いのが苦手らしい。



「ほらよ!」
「?なんだこれは」

ふいに紙袋を渡されて、というか投げられて、反射的に受け取る。
開けてみ、と言うので中を見てみると、灰色に模様の少し入ったマフラーだった。
わけも分からず顔を上げてゴールドを見ると、前を向いていた体で振り返って、

「誕生日おめっとうシルバー」

と、柔らかい笑顔で言った。



「…なんで知ってる」
「ブルー先輩がこっそり教えてくれた」

まさか姉さんの仕業だったとは。
しかしよく考えると、俺の誕生日を知ってるのは姉さんだけだった。


「シルバー、目、閉じろ」
「…何でだ」
「だ〜〜いいから!ここは空気読むってもんだろ!」

面倒くさい奴だな、と思いながらも、しょうがなく目を閉じる。
肩に手を置かれ予想通りに、小さく音を立てて軽く唇が重なり、すぐに離れた。


「プレゼント!俺からの愛だぜ!」
「……馬鹿か」
「嬉しいくせにー」
「黙れ!」
「はいはい」


よし、んじゃ行くか!と自然に手を繋がれる。

「行くってどこに」
「俺んち!行っただろ、レッド先輩たちとクリスマスパーティーやるって。まあ、おめーの誕生日のが優先だけどな」

ああ、そうか。
クリスマスパーティーと言っておきながら、俺の誕生日を祝うのも含めているのか。
他人に祝われるのを望んでいたわけじゃない。
それでも、俺のためにここまでしてくれている奴がいる。



「ゴールド」
「あ?」
「…ありがとう」


自分でも分かるくらい、棒読みのありがとうだった。
案の定、ゴールドに感情こもってねえ〜!と言われてしまった。
…礼を言うのは慣れてないんだ。


「ま、…よくあるこった、気にすんな!」


にんまりと笑ってみせて、思わず俺も口元が緩んでしまった。
雪がまたしんしんと降り、繋いだ手と首に巻いたマフラーの温もりが身に染みた。








メリーバースデイ
(キスとマフラーどっちが嬉しかった?)
(………別に)
(答えになってねーよ!)


2011.03.14
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