託した者、託された物
そういえば、
「あの子…ハリーも居るのだろう?」
この、ホグワーツに。
大切な人達の、大切な宝物。
彼等を失う少し前に会ったきりだからもう大分大きくなっているだろう。
「うん、今年でもう三年生だよ」
「早いな…どっちに似てるんだい?」
「あの子は、そうだなぁ…見た目はそっくりそのままジェームズで、目だけはリリーなの」
二人を思い出すように遠くを見る君の瞳は、とても優しくて幸せそうで、哀しみが滲んでいた。
嗚呼、神様。
貴方はこの人から思い出を奪うだけでは満足してくれないのですか…?
「…でもね、中身は全然違うよ。ジェームズみたいな悪戯っ子じゃない。まぁ多少は親譲りな所もあるけれど…あの子はハリーだから、」
僕に、そしてナマエは自分自身に言い含めるように呟く。
そうだね、とだけ返して彼女を腕の中に引き寄せた。
先程とは違う意味での抱擁。
それを察してかナマエも拒絶を示さなかった。
「ルーピンせんせ、ここは学校ですよ」
「だって泣きそうな顔してたから」
「誰が」
「君が、だよ。ナマエ……ずっとあの子の傍に居てくれてありがとう。これからは僕も一緒に居るから、ね」
だから辛い時は泣いても良いんだよ。
言葉にしなくてもきっと伝わると、過信でもなくそう信じた。
ぎゅ、と背中に回された腕が小さく震えたのは知らない振りをして。
僕達は全然変わってないね。
今も昔も。
進みたくても進めない何かがあったのは確かだけれども、それとは反対に変わっていく世間との温度差が、更に僕達を過去に置き留めてしまう。
ダンブルドアの近くに居ながらもナマエは未だ変わる事を畏れている。
未来は、
僕達が繋げていかなくちゃ駄目なんだよ。