「次会うのは新学期ね」

「うん、だけどもうすぐだ」


今日は着任の挨拶がてら、旧友を訪ねるために母校に訪れたのだ。
ダンブルドアは新学期に入ってからでも良いと言ってくれたが、どうしても新学期を迎える前に会っておきたい人達が居たから、我が儘を聞いてもらったのだ。


「そうね。でも、またこうしてリーマスとホグワーツに居られるだなんて、何だか不思議。学生時代に戻ったみたい」

「君は今でも学生で通るよ」

「ひどーい!セブルスも同じように言うのよ。お前はもう少し大人になれ、って」

「あはは、彼らしいや」

「…やっと笑った」

「え…?」


目が合うとナマエは恥ずかしそうに笑った。
そしてこれが彼女なりの気遣いだと気付くのに時間は必要なかった。

また、余りにもナマエの口ぶりや仕種が昔と変わっていなくて、これからは同僚となるかつての学友の姿を思い出すと自然と笑いが込み上げてきた。
彼女に指摘されて漸く気が付いた。
こんな風に笑うのは一体いつぶりだろうか、と。


「リーマスは笑ってる方がいいよ」


その方が貴方らしいし、私は好きだから。

柄にも無く彼女の言葉に頬が朱くなるのを感じる。
昔と変わらない彼女の、昔と変わらない言葉が懐かしい。


「…君は、本当に狡い人だ」

「え?…あっ、」

「僕は今でも君のことが好きだよ」

「リー、マ…ス…」


腕に収めた君の体温が心地好い、と思う僕を今だけ許して欲しい。


「…ゃ…リ、マ…」


力無く震える様子に気が付いて、慌てて彼女から離れた。
…こうなることは分かっていたのに。


「ごめん…今のは忘れて。僕は君を傷付けたかった訳じゃないんだ」

「……うん」

「君も、僕も…まだあの時に居るんだ」


ちっとも進めやしない。


「だけど、また進めるよ。…最近あいつの噂を聞くだろう?」

「うん…脱獄したって、ダンブルドア先生も…」

「変わらないのは僕達だけじゃないから…ゆっくり進んで行ければ良いんだ」


さぁ、これで本当に暫くお別れだ。
笑うリーマスにつられて、ナマエも笑った。



ゆっくりと、この手を引いて


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