変わってないね、と開口一番はお決まりのフレーズだった。卒業以来だから、かれこれ10年近くは過ぎているのに、まるで昨日別れを告げたみたいな口ぶりと、君の目元が緩むのが分かった。

変わったのは昔と比べて幾分か落ち着いた性格と、親友の子供が早くも3年生になったことくらい。あと、あの君が教壇に立つようになったこと。
何時も僕達に混ざって悪戯をしては先生方に怒られていたとは、きっと生徒の誰もが想像だに出来ないだろう。

そう口にすると、ナマエは瞳を悲しそうに伏せて呟いた。

「リーマスは変わったよ…笑わなくなった」

「そんなことないよ」


そんなことない。確かに僕は親友達を失った。だけど心まで置いてきたつもりはない。
それは自分への言い聞かせと、彼女を安心させるための小さな嘘。


「ホグワーツ…懐かしいな。卒業以来だ」

「普通そうだよね。ほら、あそこ…あの木の下で何時も悪戯の話し合いしてたよね」

「良く覚えてるね」


くすくすと笑う君に、つられて昔を思い出した。
彼女が指さすあの場所にはあと3人、今はもう会えない人達がいた。
思い出した途端に懐古と後悔と、そして喪失感が私を襲った。

苦しい。
辛い。
向き合いたく無い。

急に黙り込んだ僕を心配してか、ナマエは幼子をあやす様に大丈夫、と小さく口にして私の背中に手を乗せた。
僅かな重みでこうも安心出来るだなんて、僕はなんて単純なんだろうか。


「…大丈夫、まだ此処には彼等がいるよ。私も時々感じるもの」

「はは、授業中にかい?…そうだね、まだ僕は生きている。それに君も」


私達は7年間もここで過ごしたのよ。
だから、私達が覚えていれば何時だってこの場所で会える…。
人間の記憶ってそう簡単に消えるものじゃないのよ。

今はただナマエの言葉が胸の奥に響いた。





「じゃあ次はセブルスに会いに行く?」

「そうだね。きっと嫌な顔をされるのが目に浮かぶよ」


肩をすかして見せれば、それは貴方達が悪いのでしょう、と笑い声が乾いた空に響いた。

案の定セブルスはすぐに辞めれば良いのに、と言わんばかりの視線で歓迎してくれた。



あの空はいつだって



私達の時間はあの日から止まったまま



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