「ただいま、ナマエ」

また新しい傷を作って、でも私が悲しまないように優しい笑みを浮かべた貴方。
私はそんな貴方の腕にそのまま収まると、背中にそっと手を伸ばす。

「泣かないって、何時も思うのにダメなの。なんでかな…」

理由は知っている。
彼が泣かないから代わりに私が泣いているのだ。子供ながらに運命を受け入れた彼は、決して私に涙を見せない。毎月の苦痛に耐えている彼を、ただ見送るしか出来ない自分の無力さに、彼が受けた運命の重さに、私が勝手に涙を流しているのだ。
そんな私の手前だからこそ、彼は余計に弱音を吐けないのかもしれない。

「ナマエは優しいね」

抱きしめ返されて、彼の優しさに甘えたくなる。
だけど彼の隣で歩いて行くのならば、早くこの自分に別れを告げなくちゃ。彼に安心を与えられる様に、帰って来る場所だと思ってもらえる様に。

「今度は笑顔でおかえりなさいって言えるかな?」



(ナマエが僕の代わりに泣いてくれていることで、僕は救われているんだ)

20100321


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