冬の寒い日。
ぴりぴりとした冷たい空気が、適度な緊張感を誘う。
嫌ではない。むしろ心を落ち着かせるのには丁度良い。
「---ナマエ、用ってなに?」
昨晩、談話室で偶然一人で居る彼を見つけた。
こんなチャンスは中々やって来ない。
だって何時もはあの騒がしいポッター達と一緒に居るのだから。
「あのね、リーマス。私、あなたのことが---「ごめん」
え?
「ごめん、ナマエ。それ以上は言わないで」
一世一代の告白も砕け散った。
と言うよりもまだ告白すらしていないのだ。
することすら出来ない悔しさと、やんわりと断られた悲しみと、私はどちらの感情と付き合えば良いのだろう。
「ナマエ、勘違いしないで。僕は---」
「っ、こっちこそごめんね!こんな朝早くから呼び出しちゃって」
大した用事じゃなかったから!ほら皆そろそろ朝ご飯にやって来る時間だし。
何か喋っていないと涙が出てきそう。
一刻も早く立ち去りたかった。
これ以上惨めな姿は晒せない。乙女として!
「ナマエ!」
ぐい、と腕を引っ張られて、視界が暗転した。
「違うんだ。あー、いや、違わない?」
「リーマ、良く分からない」
「僕だって。ただ、一つだけ違わないこと。僕はナマエが好きだ、君よりずっと」
「え…」
本当に良く分からない。
だって、ついさっき断られたばかりじゃない。
女心と秋の空とか嘘ね。
リーマスと冬の空よ。
ああ自分で言って寒くなって来た。
「君より先に言いたくて。だからあんな言い方になっちゃったんだ。ごめん」
「リーマス、それ、本当?」
「勿論だよ。僕は、ナマエが好きで、ナマエも僕を好きだって思っていいのかな?」
「……当然!」
好きじゃなかったら大人しく抱きしめられていないよ!
20100210