この本、君も読むんだ。

図書館の片隅。魔法界のものだけでなくマグル界の書籍も集められたこの広い空間に、その本はあった。以前マグル出身の友達から聞いた題名だったので思わず手を伸ばしていた。
途端背後から掛けられた声に思わず肩が反応してしまった。

「…リーマス、驚かさないでよ」

「ごめんごめん。ナマエの姿が見えて…それにその本、そういうの好きなんだ」

手にした本のことを言われ、改めて良く見るとそれは程よく読み込まれた、元は美しい装丁だったと分かる一冊だった。Romeo and Juliet---マグルなら皆知ってる有名な話だと言っていたような気がする。

「前にリリーが言ってたの。マグルの有名な恋の話なんだってね」

「うん、でもそれはとても悲しい恋。愛し合っているのに決して周りには許されない想い…」

「リーマス…」

まるで僕達みたいだ。そう彼が言っている様に聞こえた。
私はスリザリン。リリーのようなマグル出身の魔法使いや、リーマスのような半ヒトを嫌う純血の血筋に生まれてしまった。そんな私だからこそリーマスも誰にも言えない。きっとお互い傷つく事が目に見えるから。
「私、この本読みたい。そうしたら光が見えるかもしれない。リーマスと私の…」

「ナマエ…」

こんな風にしか会えない関係にいつか終止符を。



(---もしあなたが私をやさしく見守っていてくれるなら、彼らの敵意など関係ありません。彼らの憎しみによってこの命が終わる方が、あなたの愛なしに命長らえるよりもずっといいのです。)
『Romeo and Juliet』より

20100225


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