一面真っ白だった。
朝何時もより早く目が覚めて、近くのカーテンをそっと開けて外を見た。
窓越しにもひやりとした空気が伝わってきたけれども、何より目に飛び込んで来た景色に一瞬息を飲み込んだ。
「すご…」
ホグワーツに入ってから何回も冬を迎えたけれども、こんなに積もっているのはきっと入学以来初めての事。
あまりに嬉しくて、寒さなんて何も考えずに取り敢えずローブとマフラーを羽織り、まだ寝ている友人達を起こさないように気をつけながら部屋を後にした。
外は当然思っていたよりも寒かった。
「なんでかな、見てるだけだとお菓子みたいに見えるのに」
そうじゃない?
ふわりと積もったパウダースノウは甘い砂糖菓子に、深く積もったその断面はまるでショートケーキ。
昔そのことを口にしたら「ナマエには何でも食べ物に見えるのね」と言われてしまった。
「---僕もそう思うよ」
「っ!…リーマス?」
本当に寒いね。とふわふわのマフラーに鼻先まで埋めながら、彼は近づいて来た。
どうしてリーマスがこんな朝から外にいるのだろう?とか、独り言聞かれちゃった!とか、あぁそうか彼は甘いものが好物なんだった。とか色んな思いが駆け巡っているナマエを余所に、リーマスはちゃっかり隣に立っていた。
「ほら、手が赤くなってる」
「…リーマス?」
まだ夢の中に居るのだろうか。
だって彼は私の片思いの人であって、別に恋人という訳ではないのに。
それなのに繋がれた手からは彼の温もりが伝わって来る。
(どうか繋いだ手を離さないで)
20100206