君と恋した今日
「そっか……」
本当はずっとそうだった。あの頃からずっとずっと。
だけど、何も言わずに蓮二がいなくなった時、私なんてどうでもいいんだと思った。拒絶されたような気がしたんだ。
どうして分からなかったんだろう。1番は寂しかったのは蓮二じゃないか。
私が寂しくないようにだんだん意地悪になっていったんだ。思えば、蓮二にべったりだったのに苦手意識を持ったのはそのせいだ。すごく悲しかったのに。いなくなってほしくなかったのに。いつまにか嫌いなんだと思ってた。
そんなわけ、ないのに。
蓮二はもう少しすれば帰ってくるかもしれないけど、今その待つ時間が惜しい。迎えに行こう。
全部伝えるんだ。
少し先に見慣れたジャージが翻る。
はやく、はやく。もっと頑張れ、私の足。蓮二の所へ。
ちゃんと言わなくちゃ、とびっきりの笑顔で。
「蓮二!」
懐かしいなあ。思い出したのはやっぱりこんな日だからだろうか。悲しいわけじゃないのにじんわりと涙が滲んでくる。泣くな私、メイク落ちちゃう!
とんとんとノックの音がした。とっさのことに声が詰まる。
「また、泣いているのか」
「蓮二。別に泣いてないよ」
「もう泣く暇なんてないぞ」
そう言って笑う彼の後ろからは楽しそうな声が聞こえてくる。
あの後、蓮二といる時間がどんどん増えて、私も彼らの輪に加わることが多くなっていった。本当に変わらないなあ。蓮二が大切に想っている、想われている。
そんな彼らから祝福されることはなんて幸せなことだろう。
「さて、行くか」
「うん!」
私はこれから、柳なまえになる。