■ ■ ■

▽届かない


さっきまでの喧騒が嘘のようだ。
繰り広げられた激闘の熱はとうにどこかへ行ってしまって、今では別の空気に掏り変わっている。

慌ただしく撤去されるテント。
整備されていくコート。
彼らもいつもと同じように手を動かす。

誰もが信じた勝利。
けれど、立海は一歩及ばなかった。
誰が思っただろうか。

それは、私が踏み込んではいけない領域だ。
あの空気は本人達しか分からず、受け付けず、
部外者には容赦なく突き刺さる。
自信。期待。失意。信頼。絶望。
いろんなものが混じり合う彼らだけの世界。

私は彼らに届かない。今までも、これからも。

ならば、せめて一番近い外側で、
精一杯の距離で、
その背中に手を伸ばそう。
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