あれ、不二に彼女がいたのはいいけどみょうじさんは不二が好きなんじゃないの?
そう気付いた時にはもう扉は目の前で。勢い余って危うく扉に突っ込むころだった。周りに誰もいなくて良かった。

考え出したら躊躇いが生まれて、扉を開こうと掛けた手から力が抜けた。へたりとしゃがみ込むと、ひんやりとした地面に手が触れる。そのままでいると急に扉が開いた。

「おわっ!?」
「あ、あれ! 菊丸くん!?」
「みょうじさん!」

服に付いた埃を払いながら立ち上がると声の主はみょうじさんだった。うわ、俺かっこわるすぎ。

「会えて良かった! 今から菊丸くんのとこに行こうと思ってたから」
「え?」
「これ、」

一瞬、何を差し出されたか分からなかったけれど、よく見るとそれは、くしゃくしゃになった紙飛行機だった。

「菊丸くん、だよね」

開いた口が塞がらない。まさか、まさか。みょうじさんが持ってるなんて。不二のやつ、渡してたのははこれか! ちょっと諦めかけたのに。
もう絶対諦めるわけにいかないじゃんか。

「うん、俺だよ」
「やっぱり。字見たらすぐ分かったよ」
「中、見たんだ」
「うん。あのね、」

「待って。ちゃんと俺の口から言わせて」

鼓動がどんどん速くなる。そのうちに音が気にならなくなって、静かな世界に俺とみょうじさんだけになったように感じる。落ち着け、落ち着け。
今なら、言える。

「みょうじなまえさん、俺、君が好きです。たぶん誰にも負けないくらい、大好きです」

言った途端、音が一気に戻ってきた。

「わ、私も、」

また、音が消えるような気がした。目が合ったまま時間が止まる。

「私も、菊丸くんが好き。ずっとずっと好きでした。だから一緒にいさせてください」

言葉にならないって、こういうことなんだ。どうしようもなく、うれしい。

「菊丸くん?」
「みょうじさんっ!」

思わず抱き着いた。視線を下げればみょうじさんは耳まで真っ赤になってはにかんでいる。ああ、もう可愛い。ぎゅうぎゅう抱きしめていると、視界に見慣れたジャージが写り込む。きっとあいつらだ。

「行くよっ」

手を取って駆け出す。何か叫ぶ声が聞こえた気がするけど、今は。

「……なまえっ、大好きっ!」

よし、決めたっ。これからずっとずっと笑顔でいさせてあげよう。もちろん、俺と一緒に。

ずっと、ずっと、君と一緒に

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