■ ■ ■

「歩くん速くなか?」
「大丈夫だよ」
「そうか」

それきり沈黙が続く。どうしたらいいの! というか待って待って、どうして仁王くんと帰ってるんだろう私。顔が熱くなってきた。たぶん赤くなっちゃってるなあ。ばれてないよね……。

ふと視線を感じてそっと見上げるとしっかり目が合ってしまって、仁王くんがくっと目を見開いた。スッと前を向いてしまってちょっと残念かも。ずっと目が合ってても恥ずかしくて大変だけど。

「探しに来てくれてありがとな」
「間に合った?私寝ちゃったから……」
「あー、うん。大丈夫だったナリ」
「そっか、よかった!」

やっぱり恥ずかしくて上手く話せない。助けてはるちゃん! この際丸井くんでもいいから。このままじゃドキドキしすぎて心臓もたないよ!

ぴょこぴょこ揺れる銀髪が夕焼けに照らされて赤く色づいてる。教室でも思ったけど綺麗だなあ。仁王くんだからかな。

「あの、 みょうじ さん、その、そんなに見られるとな、恥ずかしいんじゃけど」
「っ! ご、ごめんね! 綺麗な髪だなぁと思ってつい!」
「……俺の髪、綺麗?」
「うん。とっても!」
「そうなんか……」

またそれっきり黙ってしまう。私変なこと言っちゃったかなぁとうんうん唸っていたら、今度は仁王くんが見つめていた。やだ変なとこ見られた……!

「……かわええ……」
「え?」
「な、なんでもなか!」
「そう?」
「そうそう」

いや、気のせいだと思う。絶対気のせいだと思うんだけど。今、かわいいって言った……?わかってるよ!私じゃないんだよ!それにかわいいっていうなら仁王くんだと思うんだよ!

にゃあ、と足元から声がした。

「お前さんかわええのー」

抱き上げられて仁王くんに返事をするみたいに鳴いた。気のせいじゃなかった。そっか、塀の上にいた猫を見つけたんだね。びっくりしたよ仁王くん。

「首輪ついてるみたいだね」
「ほんとナリ。残念じゃけどまたな」

名残惜しそうに猫をそっとおろして歩きだす。猫好きなのかなぁ。

その後は猫の話しをしながら歩いた。やっぱり仁王くんは猫が好きらしい。実は学校にいる数匹の野良猫は自分が世話をしてるんだと教えてくれた。話しを聞くのが楽しくてあっという間に家に着いた。

「送ってくれてありがとう」
「ん。また明日」
「また明日ね」


緊張したけど一緒に帰れてうれしかったなぁ。
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