■ ■ ■

「こんにちは、みょうじさん」
「うぇ、幸村くん」

ひどいなぁ、とくすくす笑いながら近付いて来る。ちょっと申し訳なく思ったけれど、そんなこと微塵も思ってないだろうに。

「ごめんね」
「みょうじさんて、結構顔に出るよね」
「え、うそ!」
「ほんとほんと。まぁ、それはいいや。仁王知らないかい?今からミーティングなんだけどいないんだよね」

何気なく言われたその名前に心臓が跳ねた。言われなくても顔が赤くなっているのが分かる。きっと幸村くんにも分かるだろう。
うわ、恥ずかしい。

「し、知らないよ」
「あー……じゃあさ仁王見たら連れてきてくれないかな?部室でミーティングなんだ」

にやにやする幸村くんのせいでまた顔に熱が集まる。そして拒否権はないんだね幸村くん。分かってたけども。

「見つけられたらでいいんだよね?」
「うん。じゃあ頼んだから」

すごく良い笑顔で戻って行きました。これは絶対見つけないといけないんだろうなぁ。どこにいるんだろう。


とりあえず図書室と屋上を探してみたけどやっぱりいなかった。あとは教室くらいかなぁ。
教室に急いでいるとすれ違う人は少ない。たぶんほとんどが部活に行っているからだろう。

「あ、いた……!」

教室に入れば目に鮮やかな銀髪。太陽の光が反射してキラキラと輝くそれに、心臓の辺りがキュン、と締め付けられる。

「に、仁王くん、起きて?」
「……ん、……」

起きてくれたかと思ったけれど、寝返りを打っただけみたいだ。
起きる気配は無い。幸村くんに怒られる…! 想像したら悪寒が走った。

「仁王くーん……」
「……」

すやすやと眠っている顔を見ていたら、なんだか私まで眠くなってきた。仁王くんの頭をふわりと撫でる。

「……すき、だなぁ……」

ふと出た呟きはすぐに空気に吸い込まれる。すとんと自分の席に座るとすぐに意識が遠くなった。
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